新興大国の威信をかけたAPEC首脳会議
アジア太平洋の新秩序と「新型の大国関係」

 先日中国が主催したAPEC首脳会議は、国際社会の変動を象徴した会合と言ってもよいのかもしれない。世界、とりわけアジア太平洋の相対的な力のバランスの変化を如実に示した。

 また、この機会に2年半ぶりに開かれた日中首脳会談は、周辺国のみならず米国や欧州を含む世界に一定の安心感を与えたことは間違いがない。日中首脳会談がどのような意味合いを持ったものなのかを含め、今回のAPEC首脳会議の背景を読み説いてみたいと思う。

 習近平国家主席の最大の目標は、中国がイニシアティブをとる形で地域の秩序をつくっていくことと、新興大国である中国が米国と肩を並べる関係にあることを示すことにあり、これを国内外に喧伝することにあったのだろう。

 今回中国は、APEC首脳会議を開催するにあたり、北京オリンピック並みの力の入れようであった。開催期間中は大気汚染と交通渋滞の緩和のために、周辺工場を一時的に操業停止させ、車両通行規制も厳格に実施し、北京市内の公的機関には休業を命じた。

 国際会議の成功は国の威信にかかわると捉えるのは、中国だけではない。日本も初めて議長国となった1995年の大阪APECサミットや、1979年の東京G7サミットの成功には、準備に準備を重ねて望んだ。今回中国にとっては、新興大国の勢いを示す上でも特別な意味合いがあったのだろう。

 中国は今年に入ってからAPEC首脳会議に至るまでの間、「アジアの新安全保障観」や「アジアインフラ投資銀行(AIIB)」「シルクロード基金」など新たな地域秩序に関する構想を次々に発表した。

 また貿易面においても、TPPがAPEC首脳会議までに合意されていれば明らかに状況がかわっていたと思われるが、合意されなかったことに乗じて、中国はアジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)の交渉開始と2025年までの合意目標を、APEC首脳会議後の共同声明に明確に盛り込もうとした(結果的には盛り込まれなかった)。