洞爺湖で行なわれた主要国首脳会議は9日、地球温暖化への取り組みなどを盛り込んだ議長総括を発表して、閉幕となった。議長役を務めた福田首相は、「2050年までに世界各国が温暖化ガス排出量半減するという長期目標を共有することができた」と会議の成果を強調した。

 確かに、新興国を含めた主要国が、地球温暖化問題の特定の方向に目を向けるきっかけになったことは、それなりに評価されるべきことだろう。しかし、洞爺湖サミットに期待されたものは、原油・一部穀物に対する投機資金の流入規制や、サブプライム問題の表面化以降の世界的な信用収縮などについての真剣な議論だった。ところが、それらの点に関しては目立った成果は見られず、海外メディアからも辛口な評価が多かった。

 今回の首脳会議の中で最も注目すべきポイントは、世界の主役が、先進国から新興国へ移って行くことが明確になったことだろう。その視点は、今後の世界情勢を読み説く上で、見逃すことのできない重要なファクターになるはずだ。頭に入れて置いた方が良い。

世界での発言力を強め
成果を挙げたのは新興国

 今回の会議では、中国やインドなどの新興国の発言力が顕著に高まっていることが明確になった。それは、あたかも世界の主役が先進国から新興国へと移っていく様を象徴するような出来事だった。福田総理が強調した、地球温暖化ガス削減目標に関しても、当初、難敵と見られた米国は何とか説得したものの、中国・インドなどのハードルは意外なほど高く、数値目標を明言することに最後まで反対を唱えた。

 新興国のリーダー格である中国は、会議中に各国首脳の北京オリンピック出席を積極的に勧誘し、具体的にサルコジ大統領の約束を取りつけた。また、次期覇権国の有力候補として、各国のチベット問題に関する発言を封じることに成功し、“1つの中国”の原則を定着させた意義は大きい。

 G8会議の場を通じて、参加各国の間に「中国を敵に回すことは避けるべき」との雰囲気を醸成したと見てよいだろう。それこそが、中国が狙った、会議出席の無形の効果と言える。インドも、中国ほどではないものの、原子力協定等で具体的成果を上げ、中国同様、国際社会の中での発言力を高めたことは注目される。両国の存在感は、着実に確固たるものになりつつある。