近年、統計学ブームやビッグデータ解析によって、「確率・統計」に注目が集まるようになったのは、喜ばしいことである。ただし、「標準偏差」という響きに尻込みをしてしまう人は多いらしく、ブームも一過性の感がある。何事も、こつこつと学習していくしかないのだろう。

 さて、今回は、本連載でいつ登場させようかと迷っているうちに、145回目になってようやく登場させることになった「倒産確率デフォルト方程式」の話である。いままで登場させることに迷ったのは、この方程式を迂闊に持ち出すと、風説の流布(金融商品取引法158条・173条)になりかねないからだ。

 今回取り上げる家電量販店4社(ヤマダ、ビックカメラ、エディオン、ケーズと表記する)は、売上債権(受取手形+売掛金)が少なく、キャッシュが多いという特徴を有する。これらに倒産確率デフォルト方程式を当てはめても、特に問題はないであろう、と判断した。

倒産確率デフォルト方程式の登場

 倒産確率デフォルト方程式にある「デフォルト」とは、債務不履行のこと。

 債務を履行できない原因には、様々なものがあるだろう。その中で単純明快なのは、金策が尽きることである。どんなに豊富なキャッシュを抱えていても、それを上回る買入債務(支払手形+買掛金)が押し寄せては、デフォルトに陥る。

 そこで、実際の現金保有残高(実際キャッシュ残高)が減っていき、買入債務などで支払いを要する資金残高(デフォルト残高)に近づけば近づくほど、倒産する確率は高くなるものと仮定する。それを方程式で表わしたものが、次の〔図表 1〕である。

増税で混迷のヤマダ、ビック、エディオン、ケーズ <br />倒産確率デフォルト方程式などの独自分析で斬る!

〔図表 1〕の方程式の詳細については、拙著『会計&ファイナンスのための数学入門』235頁以降を参照願いたい。日本だけでなく、欧米の「確率・統計」に関する書籍を参照しても、〔図表 1〕と同じものはない。筆者オリジナルの方程式である。