−−−どんな課題がみつかったのでしょうか。

 計40組の家族にインタビューを行い、子どもの遊びに関する課題を新たに発見しました。発見した課題は(1)子どもはすぐにおもちゃに飽きるので、新しいおもちゃを買っては捨てを繰り返しているのですが、親にとっておもちゃが部屋に溢れかえることと捨てるという行為がエコに反するので苦痛、(2)子どもがスマホ・タブレットなどの画面にまるで中毒のように長時間接していることに不安や罪悪感を感じる、という2つの課題です。

 僕自身、スマホの画面を見るのが嫌いなんですが…、自分の娘にも身体を動かしたり対人コミュニケーションをとることでクリエイティビティや想像力を養ってほしいので、スマホばかりのぞき込んで育って欲しくないなあと思っていたのです。今時の子どもは外へ出かけても、ゲームやスマホの画面をのぞき込んでいます。

 じゃあ、この課題を解決しよう、とチームで再び合意して、得意とするセンサーとアプリとデータ解析が活用できる面白いことはないかと考えていったのですが問題はその課題を解決するための解決策を何にするか?です。リーンスタートアップの手法を使う際にこの点が苦労しました。

 そこで、ここからはデザイン思考のアプローチを用いて、ひたすら対象ユーザーとなる子ども達が遊んでいる姿を観察し続けました。娘と一緒に保育園に行ったときに他の子どもが遊んでいる姿を観察したり、一日保父体験もしました。こういった観察をひたすら行うことで、現実世界の遊びの体験をセンサーで拡張するというMoff Bandの原型にたどりついたわけです。

「捨てる」決断ができるかどうかも大事

−−−ぬいぐるみインターフェースというボツになったアイデアがあったからこそ、商品の方向性が具体化できた面もありそうですね。

 それはありますね。何もないところで考えていても、限界があります。

 あとは、違うと思ったときに「捨てられるかどうか」も大事だと思います。労力をかけたアイデアを捨てるというのは、すごく大変です。でも、僕らがぬいぐるみインターフェースを捨てられたのは、最初にリーンスタートアップ方式でやろうという方法論の合意があったからです。ユーザーインタビューで集めたデータを客観的に分析した結果だったので、メンバーに異論は出ませんでした。

 ビジネスは、やはりただ「面白い」だけじゃなく、次の3条件がそろってないとうまくいかないと思います。

1. 何らかの課題解決に役立つモノか?
2. 長く続くマーケットがあるか?
3. マーケットに波や変化があるか?

 僕らは時代にも恵まれていて、この3.が変化している非常にいいタイミングだったと感じてますね。