−−−2013年6月に試作機を作ったあとも、試行錯誤は続きました。
リストバンド型になるまでには、作っては試し、作っては試しの連続でした。ただ、家族をテーマにして良かったのは、ユーザーが自分の子どもやその友達など身近にいるため、テストや観察が非常にやりやすかったことです。机上の空論で考えているだけだと自信が持てない一方で、ブレークスルーできるアイデアというのは、一瞬のひらめきというか、浮かんでくるものですよね。ただし、そんなアイデアが天から降りてくるには、普段ユーザーに近いところでべったり具体的に観察して、いかに対象を分かっているかが大事なんだと思います。
キックスターターではもっといけたはず
−−−結果として、2014年3月のキックスターターでは8万ドル(約800万円)以上も集まりました。その反響には手応えを感じたのでは?
驚いたし、嬉しかったですよね。今年(2014年)の頭には、目標額の2万ドルに届くだろうかと非常に心配していたんです。
というのも、米国のぬいぐるみ型スマートおもちゃ「ウーブリー(UBOOLY)」は、キックスターターで成功したのをきっかけにベンチャー・キャピタルなどから約200万ドル(約2億円)を調達するなど有名なスタートアップ企業なんですが、彼らが最初に達成したキックスターターの達成額が目標2万ドル(約200万円)に対して2.5万ドル(約250万円)だったんです。もともとキックスターターは子ども向けプロジェクトは強くないし、日本人の先行例も少なかった。彼らですら2.5万ドルだったのに、僕ら大丈夫か…?!と不安でしたね。周囲からも、せっかく良いアイデアなのに、キックスターターで失敗してダメなビジネスという烙印を押されるぐらいなら、信頼回復も大変だから最初から出さないほうがいいのでは、という理にかなったアドバイスももらっていたんです。
−−−でも結局、トライされましたね(笑)。
ええ(笑)。8万ドルも集まったのは驚きました。
でも、うまくいったら欲が出るもので、もっといけたな、と今は思います(笑)。こんなに早く達成できると思っていなかったので、事前にストレッチ・ゴールなどの仕掛けができていなかったから、目標達成後の最初の段階で伸びが停滞してしまいました。Moff Bandの提供個数にも制限があって、ひと家族で子ども2人とお父さん分の合計3個ぐらい欲しいという希望が多かったのに、ルールとして2つまでと決められてしまったのは残念でしたね。
−−−2014年10月の発売開始後、日米Amazonの電子玩具カテゴリーにて2位にランクインしました。また、現状はネット販売のみですが、近い将来は店頭販売も予定されているとか。
はい。イベントなどとも連動して積極的に売っていきます。
−−−「おもちゃ」として売り出されていますが、さまざまなアプリを開発することで、活用法はいろいろ広がりそうですね。
今は「おもちゃ」ですが、子どもでも使えるウェアラブルな、“ナチュラル・ユーザーインターフェース・デバイス”だと考えています。最初は子どものおもちゃとして買った機器が、大人も楽しめるようになったり、ユーザーがみずから使い方を発見してくれるようになったらいいですね。
僕らからも、子どもの成長や親に向けた新たなコンテンツをどんどん提供していって、子どものおもちゃとして買ったものが、いつの間にか新しいお稽古の体験だったり、お父さんが音楽を楽しむ機器になったり、お母さんのエクササイズのデータ化にも使えたり…と、まずはファミリーのなかで用途が広がっていくよう仕掛けていきます。