8月以降、緩やかな下落傾向を続けてきた原油価格であったが、年末にかけて下げを加速させた。OPEC(石油輸出国機構)が減産を見送ったことが直接の引き金となったが、2011年、12年にWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)原油先物のチャート上の下値の支持線として機能した1バレル=76ドルという水準を下に抜けたことも大きな要因であろう。今後は76ドルを上値の抵抗線とするような弱めな推移が続く可能性が高まったといえそうだ。
原油価格下落が消費者物価の押し下げにつながるとの思惑が高まる中、物価原理主義に傾斜した日本銀行は、10月31日に実施した追加緩和の根拠として原油安を挙げた。ただし、長い目で見れば原油価格下落は消費押し上げにつながる可能性が高い。また、原油安のたびに追加緩和を行えば、原油価格急騰の際の政策対応が非常に難しくなる。今後、日銀が原油価格のさらなる下落に対して即座に反応するかどうかは不透明だ。
FRB(米連邦準備制度理事会)も「原油安がインフレ期待を抑制しないよう留意する」とのスタンスを変えておらず、好調な経済指標も相まって3年債などの米国中期債利回りにはむしろ上昇圧力がかかっている。原油安を材料