現在も深刻な人権問題を抱える米国
事実と真摯に向き合うことを重視

 日本が歴史問題において特に気をつけなければいけないのは、それが戦時中の行動という戦前の日本の体制の責任に帰されるべき問題ではなく、「現在の日本の政治指導者が歴史に向き合っていない」「歴史を歪曲しようとしている」という批判が強くなってきていることである。

 現在の日本が法の支配、民主主義的価値の尊重という面で欧米先進国に引けをとっているとは、到底思えない。むしろ、ミズーリ州ファーガソンでの白人警察官による黒人少年の射殺などから見られる人種差別や、CIAによるイラク戦争やアフガニスタン戦争捕虜に対する拷問などは、今日起こっている由々しき人権問題である。

 ただ、CIAの拷問問題についての米上院の報告書に対して、ケリー国務長官が発表したコメントで、「アメリカの強さの1つは歴史に対して向き合い、過ちを認め、それを修正するという民主主義体制の力にある」と述べている点にも、留意するべきであろう。人種差別や拷問は米国にとっての恥であるが、歴史に向き合うことを避けることはしてはならないという認識は強い。

 米国の友人たちと意見交換をするたびに、彼らは「一部政治家の靖国神社参拝や河野談話、村山談話を修正するこれまでの動きに重ね合わせてみれば、慰安婦徴用で強制性はなかったというキャンペーンは逆効果であり、米国社会では歴史を修正しようという動きと写ってしまう」という懸念を表明する。

 さらに米国の知識人の中には、「日本の歴史修正主義的な動きは日本の国家としての誇りを取り戻そうとする動きの一環であるが、結局は憲法も米国により押し付けられたのではないかという議論に繋がり反米に行き着く」と、もっともらしい解説をする者もいる。