産廃屋で、あえてニホンミツバチを飼う理由

 かのアインシュタインは、

「ハチがいなくなったら人類は4年しか生きられない」

 と言ったそうです。

 ハチがいなくなると、受粉ができなくなって植物がいなくなり、最後に人間がいなくなるというわけです。それだけミツバチは偉大な存在なのです。

 そんなミツバチを森で育ててみようと思い、絶滅しそうなニホンミツバチを飼うことにしました。ニホンミツバチは巣への帰属性が弱く、森に放すと逃げてしまうため、西洋ミツバチに比べ、非常に飼いにくいのです。

 ハチミツでビジネスをしようと思ったら、効率のいい西洋ミツバチを飼うのが簡単で、あえてニホンミツバチを飼う人はあまりいません。ニホンミツバチのハチミツは稀少でなかなか手に入らないのです。

 当社にはニホンミツバチ担当の社員がいて、自分たちで養蜂しています。

 


 1年に1回、9月に採蜜して販売しますが、すぐに完売してしまいます。
 2014年に雑誌の取材でいらした滝川クリステルさんにハチミツを差し上げたところ、「うわあ、ニホンミツバチ!」と、とても喜んでくれました。

 実は、ミツバチ1匹がつくれるハチミツの量は、1年間に小さなスプーン1杯分ほどしかありません。ですから一般的なハチミツよりも高価ですが、わかっている方はかなり喜んで買ってくれます。

環境学習の拠点で子どもたちの笑顔が生まれる

 2008年からずっと「無料で子どもたちにフィールドを貸します」という取り組みをしてきました。2013年の来場者が年間2000人超。そのうち子どもの見学者の割合は2割程度です。

 アスレチックで遊んだり、足湯に入ったり、昆虫を探したり、自分で体験するから楽しいし、記憶に残るのでしょう。
 子どもたちは「いままでで一番楽しかった」と言ってくれました。

 子どもたちの笑顔を見ていると、やはり子どもは経験させ、体感させることが大切だな、と感じます。

 環境学習のために、当社では専属の部署をつくり社員8名で対応しています。彼らのおもな仕事は案内スタッフとして接客待遇をすることで、ボランティアを含めると、20名ほどいます。

 いくら環境教育に適した施設を持っていても、見学にきていただくだけでは学びは深まりません。普通の人が里山を見ても、なぜ里山なのか、里山とはどういうものなのか、わからないでしょう。

 それが里山だとすら気づかず、広い公園だなという感想で終わってしまうかもしれません。

 案内スタッフは訓練されていますから彼らの話を聞くと、「なるほど」と思われるかと思います。何かを学んでもらうためには、ストーリーを伝える語り手が必要不可欠なのです。ぜひ現地に見学にきていただければと思います。
(第11回へつづく)

<著者プロフィール>
埼玉県入間郡三芳町にある産業廃棄物処理会社・石坂産業株式会社代表取締役社長。99年、所沢市周辺の農作物がダイオキシンで汚染されているとの報道を機に、言われなき自社批判の矢面に立たされたことに憤慨。「私が会社を変える!」と父に直談判し、2002年、2代目社長に就任。荒廃した現場で社員教育を次々実行。それにより社員の4割が去り、平均年齢が55歳から35歳になっても断固やり抜く。結果、会社存続が危ぶまれる絶体絶命の状況から年商41億円に躍進。2012年、「脱・産廃屋」を目指し、ホタルや絶滅危惧種のニホンミツバチが飛び交う里山保全活動に取り組んだ結果、日本生態系協会のJHEP(ハビタット評価認証制度)最高ランクの「AAA」を取得(日本では2社のみ)。
2013年、経済産業省「おもてなし経営企業選」に選抜。同年、創業者の父から代表権を譲り受け、代表取締役社長に就任。同年12月、首相官邸からも招待。2014年、財団法人日本そうじ協会主催の「掃除大賞」と「文部科学大臣賞」をダブル受賞。トヨタ自動車、全日本空輸、日本経営合理化協会、各種中小企業、大臣、知事、大学教授、タレント、ベストセラー作家、小学生、中南米・カリブ10ヵ国大使まで、日本全国だけでなく世界中からも見学者があとをたたない。『心ゆさぶれ! 先輩ROCK YOU』(日本テレビ系)にも出演。「所沢のジャンヌ・ダルク」という異名も。本書が初の著書。