先日、あるミドルマネジャーが私の前でこんな言葉をもらしました。
「上司から理不尽なこと言われても、言い返せないんです。部下にも強く言えなくて、全部自分で抱え込んじゃうんですよね」
話を聞くと、前回お話ししたような「パワハラ上司」ではないのに、彼は上司とちゃんと向き合えないようです。同時に、部下にもものが言えないのです。
こういったミドルは、争いを好まないというよりも回避するタイプです。流行の言葉で言えば、「草食系ミドル」という言い方の方がわかり易いかもしれません。
実は、私が接するミドルの多くが、こういったタイプのように思います。彼も、見るからに弱そうなタイプではないのに、対立や葛藤が起こると自分から引き下がるようです。別の見方をすれば、「職場でのバランスをとって潤滑油になっている人」だともいえます。
対立を回避すると、その場は穏便にことが進むのですが、事態は決して良くなるわけではありません。矛盾を自分の中に抱え込むだけで、問題を解決していないからです。問題を先送りするほど、事態は悪化していくばかりです。
では、こういったミドルはどうすればいいのでしょうか? 今回は、草食系ミドルが職場でうまく立ち回るための心得について考えてみましょう。
まずは、こみ上げてくる感情の高まりを処理する方法を知ることが重要です。草食系ミドルは、対立を回避するときに瞬間的に怒りや憤りの感情が出てくるのに、それを表に出さないまま抑え込んでいます。
何故なら「怒りの感情を抑える」というのが、職場における一般的な規範となっているからです。
実際、「感情表出力」のトレーニングを行なっても、ビジネスパーソンが喜怒哀楽の中で一番苦手なのは「怒」の感情です。「もっと怒りの感情を出して!」と言っても、「どうやったらよいかわからない。職場で怒ったこと、ないもの・・・」と泣きが入るケースさえあります。
しかし、怒りの感情を抑え続けていると、そのうち自分で制御できなくなってきます。