業界5位と低迷し、かつての輝きを失っているキリンビバレッジ。伝説のヒットメーカー、佐藤章氏の社長就任という“切り札”で巻き返しを狙うが、復活への道のりは決して平たんではない。 (「週刊ダイヤモンド」編集部 泉 秀一)

 今年3月下旬に、2人の男が東京・新宿の居酒屋で膝を突き合わせていた。熱弁を振るっていた男の名は、佐藤章(キリンビール執行役員九州統括本部長。当時)。その数日後の3月27日に、キリンビバレッジ社長へ就任した人物である。

 佐藤社長の隣にいたのが山田精二・キリンビバレッジマーケティング部長だ。彼らは、単に職場の上司と部下という関係だけでなく、大学時代からの知人で、20年以上の付き合いになる。

 旧知の間柄である山田部長に、佐藤社長は思わず本音を漏らした。「俺がビバレッジを去った7年前とは飲料業界は様変わりした。プライベートブランド(PB)が市場を席巻し、ナショナルブランド(NB)はガタガタだ。今こそ、メーカーも流通ももうかる商品を作らなければならない。値引きをしないプレミアム価格帯の商品を作りたい」──。

 果たして、佐藤社長の発案は現実のものとなり、11月には商品が店頭に並んでいた。その名は「別格」。コーヒー、ジンジャーエール、緑茶、烏龍茶の4品をそろえ、品質を重視した。価格は通常のペットボトル商品よりも約50円も高い200円に設定した。

11月4日に発売された「別格」。発売当初は店頭をにぎわしたが、1カ月を経た最近は早くも小売店の棚から消えだしている Photo by Hidekazu Izumi