(4)賃上げの本格化なるか?

 2014年、6年振りとされるベースアップ(ベア)、15年振りとされる2%超の賃金上昇がみられたことは、デフレ脱却への大きな一歩だった。ベアは定期昇給(定昇)とは違い永続的な効果を持つため、豊かさの広がりをもたらす。もっとも、ベアを実施した企業は4割程度で、引き上げ幅も十分ではなかった。15年にわたるデフレからの脱却がなるかどうか、2015年の賃上げの広がりにかかっている。この点、連合は春闘に向けて2%以上のベア要求を掲げた。また、「政労使会議」は、賃上げに向け「最大限の努力をする」と述べている。

 2015年4月には、2014年の消費税率引き上げの影響が剥落するため、2015年の賃金上昇は「実質的な」賃金の上昇となり、国民の購買力を高める。2014年の企業収益は65兆円を超える規模で改善した。かたや労働市場の需給はひっ迫している。賃金上昇の環境は十分整っている。働く世代・子育て世代を中心に、デフレ脱却の効果が感じられる新時代の到来を期待したい。

(5)「貧困」問題の本質は何か:国民的議論の深まりを

 2013年来の株高、円安が格差を広げたとの論調がある。確かにプラス効果が経済全体に波及するには、大企業による中小企業への還元や賃上げが欠かせない。だが、問題の本質は収益・所得の格差なのか。そうであれば、国民全員で貧しくなれば問題は解決する。本質を見誤ってはならない。

 優れた人材や企業は日本を豊かにする源泉だ。錦織選手や山中教授らが高報酬を得ることは賞賛されるべきことである。日本社会は、「出る杭を伸ばす」社会的寛容さを醸成する時期を迎えている。

 一方、問題は一人当たり所得3万ドルの日本で、静かに広がる「貧困」だ。子どもの貧困率は16%を超え、6人に1人が貧困水準以下の生活を送る。子どもたち・若い世代が持てる全ての才能を発揮できるために、教育の機会均等の確保と社会保障制度の見直しが急務だ。彼らの活躍が期待される東京オリンピック・パラリンピックまであと5年半。2015年は成熟した国民的議論を始める年であってほしい。