現在の利率で資金を借りられるなら、冒頭で述べた採算計算上、「住宅ローンの利用に伴う損」がかなり圧縮できている、と考えることには一理ある。日銀による長期ゾーンも含めた低金利政策が、住宅購入へのインセンティブとして働いていることは間違いない。

 他方、日銀による超低金利政策の不動産価格に対する効果の評価は、いささか微妙だ。

 株式の場合と同様に、将来のキャッシュフロー(不動産の場合家賃収入)を現在価値評価する際の割引率と、キャッシュフローの成長率とは、名目成長率が上昇すると金利が上昇する関係を通じたある種のバランスがあるはずだが、金利が人為的に抑えられると、このバランスが変化する。この場合、不動産の理論価格を高騰させる効果があるはずだ。では、不動産を素直に買うのがいいのかというと、高騰した理論価格を丸ごと信じるわけには行かない。

 人為的低金利による不動産価格の高騰が現在存在するのだとするなら、金融政策が平時に戻った段階では、先のバランスが回復する効果があるので、成長率の上昇よりも長短の金利上昇幅の方が大きくなって、不動産の理論価格は大きく下落する可能性があることになる。

 すなわち、数年後に不動産の理論価格が下落する公算が大きい。たとえば、政府の長期経済見通しのような展開になると、不動産価格が将来下落してもおかしくない。先のアンケートでも、住宅ローン金利に関しては、将来「固定も変動も上昇」するだろうとの見通しを持っている人が52.8%存在する。

人為的な長短金利の形成が
不動産の適正価格をわかりにくくする

 不動産にあっても、株式と同様に、将来いつどのような形で長短の金利が上昇するか、しないか、ということに対する見通しが必要であり、人為的な長短金利の形成が、資産の適正価格をわかりにくくしている。

 数年をタイムスパンとして考えた場合、株価も不動産価格も、現時点の価格がすでに高過ぎるのかどうかは微妙だが、デフレ脱却への手段としても資産価格が使われていることを考えると、そろそろ「高値づかみが怖い」という意識を持ち始めるのが頃合いだろう。

 先の日本経済新聞のアンケートで、「日本の住宅で改善すべき問題は?」という問いに対して1番多いのが、「購入価格が高すぎる」、2番目に「空き家が増え続けている」という回答が寄せられていることが、なかなか不気味である。