従業員のモラールは上昇、離職率は激減。米国大企業のベスト・プラクティスとして広く知られているソーシャル・プラットフォームを実現したのが米国で家電量販小売店チェーン首位のベストバイだ。

 二桁成長を続ける売上高は4兆5千億円($1=100円、09年3月期連結、うち米国78%)に達し、いまや従業員155,000人の巨大企業となっている。経済環境が厳しい中、2008年度、2009年度で米国でのベストバイ店舗は閉店ゼロ、新規開店年約100を続け、09年3月末で1023店舗を数える。

 量的な拡大だけでなく、ベストバイはJ.D. Power & Associatesの調査で家電量販店チェーンにおいて顧客満足1位(2009年11月発表)にランクされるなど、質の面でも高く評価されている。

 では、ベストバイのソーシャル・プラットフォームは、どうのように築かれ、どう発展しているのか。

二人の広告屋が現場との対話で
つくり上げた

 ベストバイに中途入社して間もないマーケティング担当のスティーブ・ベントとゲーリー・ケリングの二人組は、ホームシアターのキャンペーンに取り組み、実際に日々顧客と接する現場から顧客についての知見を得ようと店舗を回った。だが自ら足を運ぶには限界がある。そこでオンライン・フォーラムなどのフィードバック・メカニズムができれば理想的だと考えた。

 しかし、この企ては当初の狙いの調査ツールではなく、思いもかけない方向へと大きな発展をすることになる。現場からは、自分のアイデアや意見を言う場がない、他の店員や店舗とつながる手段がない、誰が何をしていて何を考えているかも分からない、といった声が多々聞かれた。そこで社内コミュニケーションへと目的を設定しなおすことになる。

 二人は、2006年6月にblueshirtnation.com(ベストバイの店員はその服装からブルーシャツと呼ばれていた)のドメイン・ネームと1年間のホスティングをクレジット・カードで100ドル支払って、“とりあえず”のコミュニティ・サイト「BlueShirt Nation(ブルーシャツ・ネーション)」を始めた。平均年齢19歳の若い店員は既にソーシャル・ウェブに慣れている。しかも、オープンでこなれた技術もあり、適切なタイミングと思われた。その後、新任のCMOは、彼らに活動の時間と少額の予算を認めることになる。