日本株の混迷は、言うまでもなく、サブプライムローン問題の余波、不安の増幅によるところが大きい。だが、それだけではない。日本株のプレゼンスそのものが下がっている。
グローバルに投資する欧米の投資家たちは、アジア域内への投資額のうち、何割を日本市場に振向けるかを決め、それを定期的に見直している。1年前は「5割を日本へ」というケースも見られたが、今は2~3割がせいぜいのところだ。
サブプライムショック後、顧客の投資資金引き揚げの動きに晒され、ポジションの縮小を迫られたヘッジファンドが、真っ先に売り払ったのは日本株だった。パフォーマンスが一番悪かったからだ。
他のアジア諸国で儲けを手にした投資家が、「合わせ切り」(課税額を減らすために利益と損失を相殺すること)の対象とするのは、だいたいが日本株である。
日本株への成長期待は、かつてとは比べものにならぬほど、萎えている。2004年以降、外国人投資家の買いで、株価が十把一絡で迫り上がってきた局面では、明らかに、日本経済そのものへの成長期待、資本の非効率が大きく改善されるだろうという期待があった。今は、それがない。
ある外資証券幹部は知り合いの外国人投資家に「増税する国には投資しない」と言われた。
政府部門はリターンの低い世界。そこが資金を吸い上げるような経済の成長余地は小さい、というのである。件の幹部は「日本は彼らの失望を買ってしまった」と痛感している。
日本の株式市場が投げ売りされて1万4700円を割り、上場企業の配当利回りが10年国債利回りを上回るような状況は、やはり売られ過ぎである。
ただし、成長期待を抱いた外国人投資家の買いによって、株価が何でもかんでも上がっていく環境が戻ることはあり得ない。
12月15日号特集「負けない株投資」は、そんな状況の中にあって「どうすればいいか?」を考えた特集である。楽観論には与していない。経済のベクトルは下向きであることを前提としている。
2008年日本経済と株式市場のゆくえを大きく左右するテーマについて、現状を分析し、今後半年~1年間の動きを見通した。そのテーマごとに、投資対象を厳しく選別するための企業リストも付いている。
ぜひ、手に取っていただきたい。
(『週刊ダイヤモンド』副編集長 小栗正嗣)