「大川小検証のやり方を謙虚に振り返る」と文科省文科省への申し入れに同行した齋藤雅弘弁護士(正面)は会見で、「検証委員会の問題は、石巻市教委、石巻市の問題と同じ構造。文科省が先頭に立って解決に向かっていかなければならない」と話した
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「検証委員会の検証は、不十分、不適切だった。遺族は納得していない」

 2011年の東日本大震災で、学校管理下の児童と教員84人が犠牲になった宮城県石巻市立大川小学校の惨事の真相究明を求め続けている大川小児童の遺族2人が10日、文科省を訪れ、ヒヤリングの早期実施と不十分だった検証委員会についての検証を求める「遺族有志一同」名の要望書を学校教育課の大路課長に手渡した。

「大川小検証のやり方を謙虚に振り返る」と文科省只野英昭さん(中)は、文科省の大路正浩学校健康教育課長に要望書を手渡す際に、「遺族が検証報告に納得していないことを理解してほしい」と話した(2015年2月10日)
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 遺族たちの要望書によると、この3年10ヵ月にわたる事後対応において、不誠実だった石巻市教育委員会加え、不十分な報告書を出した検証委員会のあり方についても、文科省の「学校事故対応に関する調査・研究」有識者会議の席上で検証する必要があると訴えている。

 中でも「責任の所在が明らかになることも厭わない」と謳って、2013年2月にスタートした検証委員会については、「なぜ(校庭から)避難しなかったのか?」という核心部分を議論することなく、「大川小にはラジオがなかった可能性がある」「15時37分で止まっている時計があり、どこからか流れてきた可能性がある」などと余計な寄り道をしながら、回が重ねられていったと指摘。

 検証委員会が最終報告書で掲げた24項目の提言は、「調査しなくても思いつく一般的なものばかりで、大川小の教訓から導き出される提言ではない」と厳しく批判している。

 そして、報告書案の意見交換会で、遺族から100項目以上の疑問点が出されたにもかかわらず、ほとんどまともな答えは返ってこなかったとしている。

「学校事件事故対応」有識者会議
なぜか大川小は調査対象にならず

 一方、文科省の「学校事故対応に関する調査研究」有識者会議は、今年度から2ヵ年計画で、学校事件・事故に関する専門家や遺族らで構成されていて、実態調査を行っている。

 受託業者である大阪教育大学メンタルサポートセンターの藤田大輔所長によると、調査の対象となっているのは、今年度までの過去10年間に、学校管理下で発生した事故・災害事例約900件。そのうち、10件ほどが詳細なヒヤリングの対象になり、この2月下旬に調査報告書がまとめられる予定で、来年度、事故後の対応ガイドライン作りに入る。

 ところが、この10件の対象の中に、なぜか大川小学校は含まれていない。