日銀審議委員の候補となった
「リフレ派」原田氏の変化

 5日、安倍内閣は早稲田大学政治学研究科教授の原田泰氏を、日銀審議委員の候補として国会に掲示した。今回の人事案は、3月25日に任期を満了する宮尾龍蔵委員(元神戸大学教授)の後任人事である。後任候補となった原田教授は、学術的には現日銀副総裁の岩田規久男氏と考え方が近く、徹底した金融緩和で日本経済を押し上げデフレ脱却を図る、いわゆる「リフレ派」の1人と見られている。

 しかし最近は、「CPI前年比+2%」という日銀の目標に対して、同氏の姿勢にやや変化が見られる。すなわち「物価目標はあくまで手段だ」という姿勢を見せ始めている。たとえば、1月のロイターのインタビューでは「物価目標はあくまで手段であり、現在のように原油安で物価動向が見えにくい局面では景気をみて政策判断すればよい」「2%目標を(2015年度に)達成できなくても良いのではないか。2%程度の(実質)経済成長が続けられるような政策運営が重要」「日銀が追加緩和に踏み切る場合の手段としては、引き続き国債買い入れの増額が適切」と述べている。

当面の金融政策には中立

 筆者は、原田氏の審議委員就任は当面の金融政策に対して中立と解釈している。ポイントは、前任の宮尾委員が昨年10月31日に「5:4」の僅差で採択されたサプライズ緩和(QQE2)に賛成していたことである(図表1参照)。したがって、原田氏が後任となることで、現行金融政策に対する賛否の分布が大きく変わるとは想像し難い。

 その意味では、10月のQQE2に反対票を投じ、今年6月30日に任期満了を迎える森本宜久委員(元東京電力取締役副社長)の後任人事がより注目される。なお、森本委員の後任候補が国会に掲示されるのは、5月頃と推測される。

日銀新人事案が暗示する市場への発信力低下出所:バークレイズ証券