ピケティ来日で改めて注目される
わが国の所得格差・資産格差

 フランスの経済学者・ピケティの来日を契機に、わが国でもまた所得格差・資産格差が問題となっている。わが国の格差の実態とそれに対する政策について、これから2回に分けて論じてみたい。

 わが国で所得格差・資産格差が問題となったのは、2000年代の小泉政権時代である。デフレからの経済脱却期で、「構造改革なくして経済成長なし」というスローガンが躍った時期だ。

 小泉総理の任期期間である2001年(平成13年)4月から06年(平成18年)9月までの5年強を含む指標を、いろいろ見てみよう。

 図表1は、各種統計によるジニ係数を比較したものであるが、これからわかることは、「所得再分配前の格差は一貫して拡大してきた」が、「再分配後で見た格差は、99年頃からほとんど拡大していない」という姿である。

 当初所得で見た格差拡大の原因は、高齢化の進展と非正規雇用者の増加の2つであると経済財政白書で分析されており、それを税と社会保障でうまく再分配し、格差拡大を防いできた姿となっている。

 しかし、OECD統計で09年の姿を見ると、違った顔が見えてくる(図表2)。

 カナダ、フランス、ドイツ、日本、オランダ、スウェーデン、米国の7ヵ国のジニ係数について、再分配前(青色)と再分配後(茶色)を比べると、再分配前の比較では格差は5番目であるが、再分配後の格差は3番目となる。