「長期的に原発依存度を低減させていくとの方針は変わらない。徹底した省エネルギーと、再生可能エネルギーの最大限の導入を進める」──。安倍晋三首相は2月12日、第189回通常国会の衆院本会議での施政方針演説で、今後のエネルギー政策について、こう述べた。
加えて、原子力規制委員会が新基準に適合すると認めた原発は再稼働を進めることにも、あらためて触れた。東日本大震災以前は3割あった原発依存度を長期的には減らしていきながら、現在停止中の全ての原発のうち“一定数”、再稼働を進めるということだ。
日本のエネルギー供給をどう賄っていくか。その具体策である「最適な電源構成(エネルギーのベストミックス)」の議論が今年に入ってようやく始まった。1月末に有識者会議の初会合が開かれ、2月に入り、原子力、火力、水力、太陽光などについて、それぞれのコストや温室効果ガスによる環境への影響の試算が開始された。
これまで国は、原発への世論が厳しいとして、再三議論を先延ばしにしてきた経緯がある。原発政策を選挙の争点から外した方が得策だという政治判断が働き、自民党は「原発は何割」といった明確な数字の提示を避けてきたのだ。2014年4月に閣議決定したエネルギー基本計画でもその策定を見送っており、国が最適な電源構成をつくるのは、民主党政権の10年度以来、実に5年ぶりとなる。
Photo by Hiroyuki Oya
なぜ、やっと今動きだしたのか。理由の一つに、原発の再稼働と廃炉の動きが活発化してきたことがある。昨年9月の九州電力の川内原発1、2号機に続き、今年2月には関西電力の高浜原発3、4号機の再稼働が決まっている。背景には、原発の代わりに使用している火力発電の燃料費が膨らみ、電力会社の経営を圧迫していることがある。だが、世論を気にして原発の議論を避けてきたにもかかわらず、再稼働のみが進んでいるかのように見える展開に、無理が生じてきている。