

「ユーザー間で共有すれば、各階層におけるコストを抑えることができる。ただし、企業にとって悩ましいのは、共有部分のセキュリティが本当に大丈夫なのかという点だ。加えて、独自所有の部分との連携がスムーズに行くのかという懸念もある。IBMはそうした企業ニーズに応えて、どの階層においてもユーザーが独自所有と共有部分を選べるように工夫している」
小池氏はその象徴的な取り組みとして、IBMが提供するIaaS型サービス「SoftLayer」の利用形態を挙げた。例えば、ネットワークでは、暗号化を施したVPN(仮想プライベートネットワーク)として一般的な「IPSec VPN」とともに、よりセキュアな管理が可能な「SSL VPN」を用意。既存システムとの接続には専用線も利用できるようにしている。また、サーバやストレージについてもユーザーが個別に利用できる仕組みを整備。これらによって、パブリッククラウドながらもセキュリティレベルの高い個別利用の環境を実現している。
同氏はこうした取り組みについて、「これだけ企業ニーズにきめ細かく対応したIaaSは他にない。企業ニーズを熟知しているIBMならではのサービスだと自負している」と強調した。
SoftLayerの展開については、日本IBMにとっても最近、大きな弾みになる動きがあった。昨年12月、グローバルで展開しているSoftLayer向けのデータセンターを国内で初めて東京に開設したことだ。
小池氏はその発表の際、「SoftLayer東京データセンター」の開設について、「業務データを国内に保持する必要性や自社のIT基盤とのハイブリッド利用、日本語でのサポート強化といった観点から、国内にデータセンターを設置してほしいという日本企業のお客様の要望を非常に多くいただいていた。今回の東京データセンター開設によって、そうした要望にすべて応えることができるようになった」と語っている。
SoftLayerの展開とともに、日本IBMの取り組みとしてもう1つ取り上げておきたいのは、同社やパートナー企業が提供しているSaaS、PaaS、IaaSの各種クラウドサービスをウェブサイトから調達できるようにしたマーケットプレイス「IBM Cloud marketplace」の日本語対応サービスを昨年9月に始めたことだ。
米国で昨年4月にスタートしたこのマーケットプレイスは、企業のクラウド利用形態が多様化する中で、SaaSで提供されるビジネスコンポーネントやミドルウェアの構成パターン、仮想環境やセキュリティソリューションなどを容易にピックアップし、試用から導入までを効率よく進めることができるようにしたものである。これにより、クラウドの利便性を大幅に向上させることができるという。
クラウドサービスのマーケットプレイスは、すでに多くのベンダーが手掛けているが、SaaS、PaaS、IaaSをすべて盛り込んだ形でグローバル展開しているのはIBMだけだ。この利用が広がれば、IBMのクラウド事業はさらに弾みがつく格好となる。