鯖の味噌煮、アクアパッツァも干物で
おしゃれな干物屋直伝レシピ

磯崎家で大人気の、鯖の干物を使った「鯖甘辛丼」。さばく手間なしで美味しい丼の完成!

 さてここからは、磯崎家のみなさんに干物の楽しみ方を教えていただこう。

 まず、干物を美味しく焼くコツはどんなことだろうか? 「焼き場離れず、じっくり焼く! 頑張って作った美味しい干物を美味しく食べる部分は、お客さまの責任です」と威志さんが笑う。

「美味しい干物の焼き加減は、だいたい8分前後ですが、随時、焼き色を見て食べてみながら、ちょうどいい塩梅に焼き上げてください。自分、お父さんや子どもたち、家族みんなの好きな焼き加減を見つけて楽しんでいただきたいですね」

 もちろん、これが「ベーシックな干物」の食べ方。しかし、磯崎家の「干物クッキング」はそればかりではない。登久子さんは、干物は忙しい主婦の調理に大いに貢献する、と語る。

「忙しいときに料理をするなら、干物を使うと、とっても便利なんですよ」と登久子さん。

「開いてあるから下処理がいらないでしょう。下味も付いているし、生魚より簡単に使えますよね。わたしなんて忙しいときはまず干物で調理(笑)」

 なにせ、家業を手伝いながら4人の子どもたちのご飯を作り続けた登久子さん。その発言にはおおいに説得力がある。

 磯崎家で人気のレシピは、鯖の干物を使った「鯖甘辛丼」。「あれはうまい」と威志さんも、俊成さんも絶賛する丼は、鯖の干物をカットして、片栗粉をつけて揚げ、しょうゆ、砂糖、酒、水を混ぜて作ったタレにからめて、白髪ねぎやしそとともにご飯に盛り付けたもの。「15分もあればできますけど、とても美味しいですよ」と登久子さん。

「そうそう、干物は煮物にも使えるのよ」

 なんと磯崎家では「鯖の味噌煮」に使われるのは鯖の干物! 意外な気もするが、水分を抜いてあるからうまみも凝縮していて、ふっくら仕上がるのだという。「味噌の加減を調整すればしょっぱくはなりませんよ」(登久子さん)。試してみたが、驚くほど美味しい。干してあるので煮る時間も少なくて済む。

 干物は洋風レシピにも大活躍。焼いたいわしの干物を玉ねぎやセロリ、パプリカなどの野菜と一緒にマリネした「いわしの干物マリネ」も登久子さんの自慢の一品。「こうすれば野菜もたっぷりとれていいでしょう」。ヘルシーな時短おさかなクッキング。まさに今の時代にフィットした魚食テクだ。

平成19年に農林水産大臣賞を受賞した「金目鯛の干物」を使ったアクアパッツァに「あじの干物のパスタ ジェノべーゼソース」

 料理好きな俊成さんも「干物は使えますね」と、よく作るというオリジナルレシピの料理写真を見せてくれた。「金目鯛の干物のアクアパッツァ」に、「あじの干物のパスタ ジェノべーゼソース」。なんと「干物イタリアン」! こんなメニューが出てきたら、女子のハートはわしづかみだ。なんだかどんどん干物ワールドが楽しくなってきた。

 サスニンベンの一見「カフェ」風に見えるコーナーは飲食スペースではない。いまは地元客だけではく、ネットで商品を購入したお客さんもお店にやってくる。訪れた人々に、威志さんたちと魚や干物について話したりしながら、ゆっくり過ごしてもらうためのスペースだ。

「昔はどこの町にも魚屋さんがあって、お店との会話がありました。いまは消費者のみなさんが魚について知識を付ける機会が減っているように思います。うちの商品を通して魚のことをもっと知っていただいて、魚をもっと美味しく楽しんでいただけるようになったら、と思っています」(威志さん)

 美味しい干物、すてきなヒモノ、楽しいHIMONO。目利きの父と革新の息子。温故知新の体験に満ちた「サスニンベン」を訪ねて、干物は平成の食卓で新たな進化を遂げる可能性を感じるとともに、忘れていた何かを思い出させてくれる「日本人の宝物」のように思えてきた。今宵の食卓は、ぜひ幸せの干物時間を。

<取材にご協力いただいた方>
■サスニンベン
http://www.sasuninben.info/