南アフリカ共和国の次期大統領選挙の結果によっては、2010年のサッカーワールドカップの開催が危ぶまれる可能性がある。サッカーファンには聞き捨てならない話だろう。

 1994年、ネルソン・マンデラ氏が大統領に就任すると、人種隔離政策アパルトヘイトにより黒人を支配していた白人政権は終焉した。マンデラ氏は大統領に就任するにあたり、決して白人に報復しないように国民に呼びかけた。そのおかげもあり、白人が発展させた南アフリカ経済をそのまま受け継ぎ、成長を持続させた。

 国際通貨基金(IMF)によれば、南アフリカのGDPは約2600億ドル(2006年)で、アフリカ大陸のなかでトップ。アフリカの盟主ともいえるほど存在感を増している。

 しかし、政権内部は決して一枚岩ではない。原因は次期大統領選をめぐる混迷にある。そして、その混迷がワールドカップ運営を危機に追い込みかねないのである。

ジンバブエから難民が大量流入
貧民層の不満爆発で外国人排斥激化

 現大統領であるタボ・ムベキ氏は経済成長を持続させたことで、国際社会からは一定の評価を得ているが、自国民からの受けは最悪だ。経済成長を重視するあまり、黒人貧困層への対策が疎かになり、格差が拡大したとの批判がある。

 また、ジンバブエからの難民流入に対して手を打ってこなかったことも、最近のムベキ氏への批判の大きな原因となっている。

 南アフリカのお隣ジンバブエは政治、経済共に機能不全に陥っている。英国から独立してから30年近くも独裁を続けてきた同国のロバート・ムガベ大統領は自身の保身以外の政策は一切行わない為政者だ。

 これまでムガベ大統領に反対する勢力は数万人が虐殺され、過去に大統領候補といわれた人物の複数が軍車両との交通事故で不審死している。周囲の側近だけに富が還流し、「ヒトラーのような人物になる」と自ら公言してはばからない。ジンバブエのインフレは年率10万%を超えている。そんな自国に愛想を着かした100万人以上のジンバブエ人が南アフリカ共和国に難民として流れ込んだのだ。