
最終的には地産地消が活発になって、地域活性化となれば……。そのためにも、まずは、もっと漁協の存在をアピールしたい! 何かできることがあれば! と思った伏黒さん。
とはいえ、いきなり、「若輩者の自分が、いきなり目立ったことをするのもはばかられた」(伏黒さん)ため、こっそり漁協のロゴマークを作ってみた。「マルにス」とかかれた組合の昔ながらのマークを、「もっと印象的で目立つもの」にアレンジし、まずは名刺にコソッと入れてみた。何も言われなかったので、ちらしや漁協ブランド商品に、さらにコソッと入れてみた。外部の人々に「これなんですか?」と親しまれているうちに、ある日組合長がひとこと。
「おい、このロゴでTシャツとか、つくんねえのかよ」
じつはみんな、「非公式ロゴ」を温かい目で見ていてくれたらしい。
魚をさばけなきゃはじまらない!
ビーチでさばき方講座&朝どれ直売所オープン
「よし! これからもっとチャレンジだ!」
安心した伏黒さんたち職員は「思いついたことはとにかく試そう!」とあの手この手の「平塚の魚普及キャンペーン大作戦」をスタートした。漁協のHPを見ても「ごろびき網体験とお魚観察会」「SUNSUNマルシェ出店」などイベントや出店が目白押しだ。
まず企画したのが「魚の扱いを知ってもらう」イベントだった。地元の友人たちからは、「魚をさばけないから食べない」という声が多かったからだ。

「僕も漁協に入るまではさばけませんでした。でも、漁師さんから大量にもらった魚を扱ううちに、カンタンにさばけるようになったら魚を食べる頻度が増えました」と伏黒さん。
「それに、さばけると一気に楽しくなるんですよ」(伏黒さん)
これは伏黒家で実証されている話である。奥さまも、結婚前までは、まったく魚をさばいたことがないうえに、さほど食べてもいなかったそうだ。
しかし、毎日家にやってくる魚をさばきはじめて以来、魚料理に開眼。伏黒家の魚度数は一気にアップ。いまやレシピサイトにオリジナルの魚レシピをせっせと投稿する日々。子どもたちも魚が大好きだ。
さらには夫婦で「まるごとの魚」の奪い合いが始まった。「洋風料理を作るために魚をさばきたい」奥さんと「美しい刺し盛りを作るために魚をさばきたい」伏黒さんとの間で「僕がさばく」「わたしがさばきたい」と「家庭内さばきバトル」が勃発しているらしい。
「平塚の魚をまるごと買ってさばいて楽しむ、が平塚市民のスタイルとして定着したらもっと地元の魚の消費は増えるに違いない」。かくして企画されたイベント名は「ビーチdeさばき方教室」。「『漁港でさばき方教室』ではなんだか夢がない(笑)。魚と縁遠い若いひとたちにも、散歩がてら来てもらえたら」と、こだわってつけた名前だ。