NTTドコモとauは来年前半にも、スマートフォン(多機能携帯電話)の真打ち的な存在である「グーグル携帯」を投入する方針を固めた。すでに両社とも、具体的な製品開発に躍起になっているという。
利用者にとって有難いのは、グーグル携帯は価格が従来の携帯電話機より大幅に下がると見込まれることだ。グーグルが同社製の携帯電話用ソフトウェア「アンドロイド」を無償で提供するので、メーカーの開発コストを押し上げていたソフトウェアの開発費を節約できるのだ。
しかし、アンドロイドには、もうひとつ大きな特色がある。それはインターネット志向が強く、ユーザーが自由に好きなソフトウェアやアプリケーションを搭載できるオープン性の高さだ。そして、このオープン性は、ある種の黒船だ。これまでiモードに代表されるサービスの垂直統合(通信インフラサービスが本業の携帯電話会社が、インターネットサービスプロバイダーなど上位レイヤーのビジネスを一体的に統合して提供すること)によって、サービス利用料や通信料の拡大を目指してきた携帯各社の「垂直統合型ビジネスモデル」と競合するのが確実とされる。
いったい、ユーザーは、オープン型モデルと垂直統合モデルのどちらを支持するのだろうか。グーグル携帯の登場するオープン型モデル元年(2009年)の動向から目が離せない。
将来性をにらんで
スマートフォン開発が活発化
7月に鳴り物入りで売り出した米アップル社製のiフォンで、ソフトバンクが見事にずっこけたことが原因で、一時は慎重姿勢が目立った各社のスマートフォン開発競争だが、ここへきて次第に熱気を取り戻してきた。
理由は簡単だ。日本では現在、スマートフォンは携帯電話・PHS市場全体の2%に過ぎないが、米国では2割近くに達したとのデータがあるからだ。ちなみに、国内の携帯電話とPHSの契約者数は、10月末で1億969万件に及ぶから、今後数年間で全体の15%がスマートフォンに置き換わるとすれば、潜在的な需要は1500万台にのぼることになる。これだけの規模があれば、当然、「長い目で見れば、放置できない市場だとの判断が働く」(イー・モバイル広報部)という。
具体的に、各社の動きを見てみよう。
あのiフォン争奪戦で破れたNTTドコモの山田隆持社長は、9月29日の記者会見で、「2009年中には約10機種のスマートフォンを投入する」と宣言した。この中には、現在、米国で人気のカナダ社製「ブラックベリー」や定番OS「ウィンドウズモバイル」を搭載した製品だけでなく、アンドロイドをを採用したスマートフォンを投入する計画も含まれているのだ。
一方で、どちらかと言えばスマートフォンでは出遅れが目立っていたライバルauの小野寺正社長も、10月22日の会見で記者からの質問に答えて、「我々は、アンドロイドに積極的。時期は未定ですが、いずれアンドロイド端末が出てくると思います」と発言、グーグル携帯の開発競争に参戦することを表明した。