都内屈指の高級住宅地ゾーンである世田谷区にあって、環境の良さで群を抜くのが用賀駅周辺の一帯である。整然とした街並。大公園、美術館、農園までもがこの街にはある。名ばかりのステイタスとは無縁の、アメニティに優れたこの生活ゾーンは、世田谷のほぼ中心に位置している。
アクセスとアメニティ
住宅地としての用賀が持つ魅力は、都市の外周部にあるという立地から来るアンビバレントな住みやすさである。つまり、渋谷まで11分という「アクセスの良さ」と優秀な「環境」という、並び立ちにくい2つの好条件を兼ね備えているのだ。あるいは、バランスがとれている、といってもいいかもしれない。
こうした特色は、世田谷一帯が外山手地区と呼ばれていた1950年代頃からのものであるが、用賀はその長所の一方である「環境」をいまもとどめている稀少な存在なのだ。
用賀においては、街が便利になることが、むしろ街並みの美化に働いていくという幸運があったようだ。ガタガタゴットンの玉川電車は、高速化された新玉川線、のち田園都市線となって地下に潜った。街並みを整備する原動力になったのは、いまも緑を保証する馬事公苑である。
[砧公園] 広い敷地に多くの緑が広がっている。住民たちの憩いの場所。 |
そして、第2次大戦中の防空緑地であった砧公園。用賀の周辺には、恵まれた環境が残されている。
現在の用賀を特長づけるものは、これら残された貴重な緑と、まるで京都のように整った街路である。地図をみるとよく分かるが、上用賀から用賀四丁目に至る一画は、定規で引いたような直線道路が直角に交わるブロックである。