経営者達が、ここまで意図的に悪くなくても、株式を持ち合って安定株主を持つことによって、経営者は自社が敵対的に買収されて自分の職を失うリスクとそのプレッシャーから、自らを解放することができる。

 しかし、これは実質上、株主によるコントロールが効かなくなるということだから、政策株保有者でない一般株主がよしとするかどうかには、大いに疑問がある。

 あえていうなら、株式持ち合いによって上場企業の経営者がお互いを甘やかし合っていることが、日本の企業経営効率を悪化させている。直接的ではないまでも、ここの狙いを付けた点で、今回の「コーポレートガバナンス・コード」の原案はなかなか優れている。これなら、政府が描く成長戦略の一助になるかもしれない。

持ち合い解消の大チャンスだ
株価上昇を見逃してはもったいない

 上場会社同士が「保有のねらい」を厳密に「合理的」に説明しようとすると、「一般投資家的株主の立場」からはほとんど常に困難が生じる。

 それでは、政策保有株式の存在を合理的に説明できないのであれば、売却してしまうことが合理的なのではないか。こう考えても不思議はない。

 特に日本の場合、銀行が先のA社の立場にあって、企業の株式を保有しているケースが多いが、銀行の株式保有には、株主の立場と融資の債権者の立場のコンフリクト(利益相反)の問題もあるし、加えて、株価変動のリスクをバランスシートに抱えることの問題もある。銀行の株式保有、特に上場会社の株式保有は、日本の金融システムが抱える大きな問題点の一つだ。

 しかし、株式を保有する相手企業との取引関係を考え、株式売却の理由を説明することの気まずさも含めて、政策保有株式は売りにくいと感じる銀行が多かろう。

 この際、銀行は発想を変え、金融庁にも方針を示してもらって、コーポレートガバナンス・コードの制定を機に、政策保有株式を一気に売ってはどうか。幸い、株価が上昇しているし、公的年金といった高い株価でも株式を買ってくれる買い手が登場中だ。

 銀行だけに限らない。企業は現状を「政策保有株式」を売却する大チャンスだと捉えて、資本政策を練り直してはどうか。株価上昇をぼんやり眺めているだけではもったいない。