DIAMOND CFO FORUM

一流の経営者はデータの向こうに
現場が見える(上)

伊丹敬之・東京理科大学大学院イノベーション研究科教授

――かつて「勘ピュータ」といった属人的な意思決定への反省から、主要な経営指標を常時チェックしながら迅速に意思決定を下す「コックピット経営」の必要性が唱えられました。会計データ依存症は、こうした計数管理ツールの弊害なのでしょうか。

 いいえ、違います。さまざまな会計数値やデータを意思決定や業績評価に活用するシステム、すなわち管理会計システムは必須のものです。そして、そこから上がってくる会計データに基づいて合理的な判断を下すことも同様です。ちなみに、修羅場を何度もくぐり抜けた歴戦の経営者の勘ピュータは、けっしてあなどれませんよ。

 稲盛和夫さんは、「経営は会計の数字を見てするのが基本である」とよく話されます。日本航空の再建の任に着いた時、彼が「先月の数字を見たい」と言うと、何と3カ月前の数字が出てきた。その時、「飛行機のコックピットには計器がいっぱいあって、その計器を全部見なければ安全に飛べないだろう」と、経営幹部たちを叱ったそうです。

 その後すぐ、路線ごとに月次あるいは日次で採算を管理するよう、経理システムを大幅に変更し、また各職場の人が数値を意識して働いてくれるよう、部門別管理会計制度を導入しました。

 ですが、稲盛さんも言っているように、会計データを見るのはあくまで基本であり、その先があるのです。

 彼は「現場には神がいる」――これは弁護士の中坊公平さんの言葉です――と述べているように、実はゴリゴリの現場主義者です。要するに、数字もきっちり見るが、さらに数字の奥の現場をきちんと見ようとします。

 そこで私が申し上げたいのは、定量的な会計データを表面的に解釈するのではなく、その会計数値はどんな現場の実態から生まれてきたのかを考える必要がある、ということです。

 それには、現場の真の困り事、現場の雰囲気、現場の人たちの感情や癖などを会計数値から読み取るように努力しなければならない。定性的な要因が会計数値の背後にどううごめいているか、それを考えなければならない。

 言い換えれば、皆さん、すっかり会計データに頼り切って、現場の現実をちゃんと把握していますか、というメッセージでもあります。

――では、こうした現場の定性的な要因を適切に考慮するには、どうすればいいでしょうか。

 順を追って説明させてください。まず、「現場を管理するための仕事」について整理してみたいと思います。上下を問わず、管理を仕事としている人は、大きく次の4つのことをしています。

現場を評価する。
現場に直接介入する。
現場に任せていない意思決定を下す。
現場に影響を及ぼす。

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