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一流の経営者はデータの向こうに
現場が見える(上)

伊丹敬之・東京理科大学大学院イノベーション研究科教授

 少々補足しますと、①は、いわゆる業績評価です。②は、部下に委譲した権限をいったん解除し、任せた仕事に対してあれこれ指示を出すことです。この直接介入が頻繁に生じることが望ましくないのは、言うまでもありませんね。

 ③は、たとえば経営者ならば、ビジョンや経営戦略を決めたり、事業の取捨選択やM&Aを判断したりなど、みずから下さなければならない高次元の意思決定のことです。そして④は、現場のモチベーションを高め、よい方向へと仕事の実態を誘導するための働きかけです。

 これら4つのうち、いちばん目立たないけれども、何より重要なのが「④現場に影響を及ぼす」ことです。優れた経営者やリーダーといわれる人は、現場にさまざまな微妙な影響を及ぼす仕組みづくりに長けているものです。

 続いて、「管理会計システムの二面性」という問題について理解しておく必要があります。

 一つは、「上司への情報システム」という側面です。今日の文脈からすると「経営者への情報システム」というべきでしょうか。

 これは、もっぱら「①現場を評価する」と「②現場に直接介入する」ために、現場の実績を測定・数値化し、これらを上司に報告する機能です。これについては、普通にイメージできるのではないでしょうか。

 そして、多くの人が意識していないのが、もう一つの「部下への影響システム」、あるいは「現場への影響システム」という側面です。

 すなわち、管理会計システムには、「何を測定しているのか」「その会計データが何のために利用されるのか」など測定の対象や目的に応じて、はからずも現場の人たちの行動を左右する力がある、現場に影響を与えてしまう、という意味です。

 たとえば、事業部の利益計算で本社費を「正規社員数」で配賦して負担させる計算にすると、正規社員を減らして派遣社員を増やす行動を取りたくなる事業部長が出てくる。自分の事業部利益を大きく見せるためです。

 つまり、管理会計システムは、経営者や管理者に会計データを提供しているだけでなく、彼らに成り代わって「現場に影響を及ぼして」もいるのです。

「見える化」は
「見せる化」の始まり

――会計データを額面通りに見ていては、現場の実態は見えてこないわけですね。

 なぜそのような数値になったのか、その本当の理由を知るには、その会計データに隠されたメッセージ、つまり影響システムがどのように作用したのかを知る必要があります。なぜなら、会計データは現場の人たちの行動の集約結果で、実はその背後には彼らの感情も詰まっているものだからです。

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