11月6日に、参議院財政金融委員会に参考人として出席する機会があった。峰崎直樹委員長の説明によれば、日本銀行が10月31日に展望レポートを公表したこともあり、民間が日銀をどのように評価しているのか意見を聞いてみようという趣旨だったようだ。

 民間エコノミストや金融市場関係者が財政金融委員会で意見陳述する試みは非常によいことではないかと思われる。

 元日銀審議委員の植田和男・東京大学教授、日本総合研究所副理事長の高橋進氏、みずほ証券チーフストラテジストの高田創氏も参考人として招かれていたため、ネット中継を見た市場参加者は多かった模様だ。

 せっかくの機会でもあり、「総裁ポストに空白が生じると市場は不安を感じる恐れがある。福井俊彦総裁の任期が切れる前に次期総裁が決まるようにしてほしい」と発言してみた。

 日銀総裁、副総裁は衆参両院の同意を得て内閣が任命する。同意人事に関して「衆議院の優越」はない。政府が指名した候補者が参院で拒絶されれば、政府は別の候補を探す必要が生じる。

 これに対し、金融政策に精通している民主党の大塚耕平議員から、「総裁が不在となった場合、日銀法は、金融政策決定会合の議長を残りの政策委員で互選することを定めている。加藤さんには、この点を金融市場の人たちにぜひ伝えてもらいたい」と言われた。また、大塚議員からは次のような質問もあった。「総裁と(金融政策決定会合の)議長を別の人物が務めるという考え方はどうですか?」。

 次期総裁の承認が間に合わないとき、金融政策以外の決定事項の責任者に関しては、日銀法第22条5項に沿って、臨時総裁を日銀理事から選んではどうか?という議論が背景にある。

 経済や金融市場が平穏な「凪状態」ならば、そういったことが短期間起きても大きな問題はないだろう。

 一般論としては、先行き5年間の日本経済に大きな影響を与える人事であるだけに、時間切れになりそうであっても、ベストな人選を模索すべき局面もあると思われる。

 しかし、昨今のように米サブプライム問題の余波で金融市場のボラティリティは高まっている。現時点ではそういった事態は極力避けるほうがよいと思われる。

 11月13日に民主党の小沢一郎代表は、総裁候補の1人である武藤敏郎・日銀副総裁について「100%ノーではない」と語ったと報じられている。

 現時点の相対的な可能性としては、武藤氏が次期総裁となる確率が高いと予想している。しかし、先行き政局となる可能性もあり、流動的な状況は当分続くと思われる。
(東短リサーチ取締役 加藤 出)