フリーエージェントという組織

 東京R不動産のメンバーたちは、「フリーエージェント・スタイル」という働き方をしている。これは、プロ野球選手で例えるとわかりやすい。プロ野球では、選手たちは基本的に個人事業主だ。選手は球団と「契約」し、成果に応じて報酬をもらう。

 個人の成果が低ければ年俸は下がり、高ければ上がる。しかし、個人の成果の前にまずチームが勝たないといけない。選手はチームが優勝するという共通の目的を持っていて、個人プレーヤーでありながら、チームが優勝するためにがんばるのだ。

 東京R不動産のメンバーたちも、会社と「契約」している個人プレーヤーだ。サイトという場を使ってそれぞれが商売しているとも言えるけれど、同時にサイトをおもしろくして人が集まるように一緒にがんばっている。報酬は個人の成果に連動しているし、個人の裁量が大きいけど、チームとしてお互いに連携もしながら動いている。

 スポーツ選手は、最もわかりやすいフリーエージェントの形だろう。優勝するとそのチームの観客動員が増えて年俸が上がるように、東京R不動産も人気が出て、サイトを見てくれる人も増えて、各物件への問い合わせが増えると、利益も生まれ、個人へと還元される。個人とチームのそれぞれに意味があるのだ。

 僕らの仕事は最初からフリーエージェント・スタイルで始まった。最初のころは売上がほとんどなかったから、みんなアルバイトをしながらやっていた。夜は焼き鳥屋でバイトしていたり、自分でグラフィックデザインの仕事をしたり。会社にもお金がなかったから、社員として雇うのは厳しかったので、お金が入ったら払う、という方法しかとれなかったのだ。

 でも、理由はそれだけではなかった。僕らはこの仕事をマジメにしっかり仕事として進化させるために、経済的にもそれぞれがきちんと成り立つようにしたかった。そういうマインドをメンバーが必然的に持つ状況をつくることが必要だと思っていた。また、個性的な物件を見つけていくバイヤーたちは個性的な人間だから、社員として人の「下」で働くよりも、フラットに集まったチームで自由に動くことが合っていたのだ。