世界経済の低迷などで外部環境が変化すると、アジア諸国ではよく内需と外需のバランスが取れた成長が必要だという議論が出てきますが、それを実現するのは難しいと思います。韓国のような「小国開放経済」では、外部環境に左右されるのは避けられない面があります。

 ただ、そんななかでも一部の韓国企業はチャイナリスクを認識し、動き始めています。韓国政府は外交面で中国との関係緊密化を図っていますが、企業は状況を冷静に見つめています。たとえばサムスン電子は、中国に半導体生産工場をつくる一方、スマホ・家電関係はベトナムに生産拠点を移動していますし、LGも似たような動きをしています。中国での事業がうまくいかなかったロッテも、東南アジアでの事業に力を入れています。

 むろん、輸出依存はある程度是正できるとしても、韓国は国内市場が小さいので、大きく変えることは難しいでしょう。政府は内需拡大のために、バイオ、医療、ヘルスケア、スマートシティ関連産業の育成には力を入れており、こうした取り組みは、徐々に実って行くと思います。 

不満を感じる一方で憧れも
財閥に対する複雑な国民感情

――構造問題と言えば、以前から指摘されている財閥偏重型の経済成長も挙げられます。

 経済の民主化は、先の大統領選で大きな争点になりました。2000年代、財閥系企業はグローバル展開を進めて成長しましたが、財閥系企業と関係のない国民にとっては、財閥主導の成長が自分たちの生活に必ずしもプラスになっていませんでした。非正規雇用の増加、格差の拡大など、財閥主導の成長に不満をもっていたというのが現実だったと思います。だからこそ、先の大統領選で経済民主化が出て来たわけです。

 とは言え、財閥中心の経済構造を変えることは容易ではない。財閥改革があまり進んでいないのは、財閥の勢いがなくなることによって、経済全体の活力がなくなってしまうことを恐れているのでしょう。また、前述したように、ベンチャー企業のメンターとしての役割を財閥に期待しています。こうしてみると、朴大統領は財閥に対して、政府の政策と協調した経営を行うこと、国民と共に歩む意識を持つことを求めていると考えられます。

――財閥中心の経済は、どのように是正されるべきでしょうか。

 経営トップの脱税事件やナッツ・リターン事件からもわかる通り、財閥のガバナンス、体質改善を求める声は大きいですが、韓国人の財閥に対する感情は結構複雑です。不満を持つ一方で、多くの親は、できれば自分の子どもたちに財閥系の企業に就職してほしいと思っている。やはり世界に通用する企業だし、そこに就職することで高い年収や社会的地位が得られ、様々な可能性が開かれるからです。

 大企業と中小企業とでは、経済的な格差や社会的な評価があまりにも違いすぎる。そのため、大企業に就職できなかった優秀な学生たちが、中小企業に就職したがらないのです。このため、中小企業は優秀な人材を確保できず、技術力の底上げも成長もできません。悪循環です。

 結局、こうした状況を是正しないと経済全体の民主化・活性化もできないわけで、中小企業をいかに成長させるかは、古くて新しい問題です。