首相官邸の屋上から無人飛行機「ドローン」が見つかり、放射性物質セシウムが検出されたことで世間を騒然とさせている。米ホワイトハウスでも進入事件が起きるなど不気味な存在と見られがちなドローンだが、ビジネスの世界ではさまざまな活用が検討されている。その詳細に迫った本誌2015年2月14日号の第2特集「空の産業革命 ドローンの現実」の一部をお届けする。

「ドローン」という無人飛行機が未来のビジネスの種として注目を集めている。単なるラジコンヘリと侮るなかれ。航空機とは異なる「低空域」という新たな空間資源をどう開拓するか、世界中で取り組みが始まっているのだ。その現状と今後の課題を追った。
 
今年1月に米ラスベガスで開かれたCES。ドローンが会場の一角を埋めていた Photo by Ken Fukasawa

新たな“空間資源”を活用せよ
ドローンが拡張する事業領域

無線で自由に空を飛び回る無人飛行機「ドローン」が世界中で脚光を浴びている。国際的なルール策定の行方に注目が集まる2015年はまさに「ドローン元年」となりそうだ。

 毎年1月に米ラスベガスで開催される世界最大の家電見本市「コンシューマー・エレクトロニクス・ショー(CES)」は、その年の家電・情報・通信・エレクトロニクス業界の動向を占い、新たな“主役”を競うイベントでもある。

 その意味では今年、間違いなくその存在感を存分に示していたのは「ドローン」だった。ドローンとは無人の飛行機のこと。無線で遠隔操縦したり、自動操縦プログラムによって空を自由に飛び回るヘリコプターや飛行機を指す。

 例えば、基調講演の一つを担った米インテルのブライアン・クルザニッチCEOは、飛行型ウェアラブル・カメラを紹介した。

 四つのプロペラを備えた小型ドローンで、通常はブレスレットのように手首に巻いておける。クルザニッチCEOの前で開発者が手首から外して飛び立 たせると、空中で自分たちの写真を撮り、再び手元に戻ってきた。ドローンが撮影した写真は、その場でスクリーンに映し出され、観衆を沸かせた。

インテルが披露したカメラ付きのウェアラブル・ドローン。手元から飛び立ち、写真を撮って戻ってくる Photo by K.F.

 会場にはドローンだけを集めた一角もでき、多くのメーカーが自慢の品を展示。そこら中にドローンが飛び回っていた。特に、フランスのパロットは、 入り口近くの最も目立つ場所に大きなステージを設置し、一糸乱れぬドローンの隊列飛行を披露してみせた。10分置きに内容が変わる“ドローンショー”に、 多くの観衆が立ち止まり、見入っていた。