河合 友人の息子さんが、イギリスの名門大学に行っていたけど6ヵ月で休学してしまいました。とても賢くて、16歳からプログラミングをやっている男の子です。大学1年生の夏休みにマイクロソフトにサマーインターンで行ったら、偶然、ビル・ゲイツに会ったと言って喜んでいたのですが、数ヵ月後「起業する」と休学しています。彼は、まだ20歳になったばかりです。1日16時間も働いている姿を見て、心配した友人が私に相談してきました。そのときは、大学はいつでも戻れるし、IT業界はスピードも速いからいま起業したほうがいいんじゃないと伝えましたが、こういう例は特別でしょうね。
水永 IT業界は特にね。ゲイツだって大学に行くのをやめたわけですから(笑)。明確な目的がある場合はいいと思います。ただ、何かわからないけどとりあえず起業したいという子にとっては、早過ぎると思いますね。
大学にはたくさんいますよ。何かわからないけど起業したり、友だちが起業した会社に入るか、大企業に行くのか迷っていますという質問は多いですね。何も決まっていないのに「起業したい」と言う学生もいます。「起業のネタはあるの?」と聞くと「起業すると決めてから探します」と言うので、それは順序が逆でしょ、と(笑)。
野球が上手くても
みんながイチローにはなれない
河合 一方で、大企業にともかく3年くらいは働いてという感じの子も多いですよね。大企業で一生働くのではなく、次に本当にやりたいことをするために会社でスキルを磨く、あるいはじっと我慢するんだという学生たちです。彼らはある意味では賢いのかもしれません。
水永 そうですね。1回は行ったほうがいいと思いますよ、やっぱり。
河合 日本はまだまだ、新卒でないと入れない企業もありますからね。
水永 途中から入れないですからね。もちろん、人によって考えは違うでしょうけれども。現に、自分が学生のときに立ち上げたベンチャーをあのまま続けていても、上場まで持っていけなかっただろうという確信があります。それは何も知らなかったからです。あの知識の状態で行けたら奇跡としか思いません。
河合 仕事で忙しすぎて、勉強する時間がないかもしれないですね。
水永 ないです、まったくありません。上場と言われても、上場とは何かがわからないわけです。何をどうしたら上場するのという次元ですよ(笑)。
河合 そうですよね。
水永 その仕組みを知っている人を雇えばいいのかもしれませんが、何を知っている人を雇えばいいのかもわからず、怪しい人を雇ってしまってとんでもないことになることも考えられます。落とし穴だらけで、どの落とし穴にもはまらないで上場まで行ける可能性はほぼゼロに近いと思います。堀江さんは成功したじゃないかと学生は言いますが、それは、野球が上手ければみんなイチローになれるのかという話と同じです。
河合 確率ですね。
水永 はい。確率論だということです。
最終回更新は5月22日(金)を予定。