「経営戦略実践講座」の連載第9回目は、消費財業界である。

 今回、消費財業界として、食品、清涼飲料、酒類、菓子、トイレタリー、化粧品などの製造メーカーを想定している。消費財は、産業財や耐久消費財と並ぶものなので、本来アパレルなども含まれるが、上記製品とは市場の特性が異なるため、割愛する。

 「戦略のパラドックス」では、不確定要素を洗い出す際に、5つの視点を活用することを提唱している。それぞれの視点で気にすべき不確定要素はあるが、消費財業界では「経済/規制」と「社会/生活者」の視点が、今後の戦略立案の上で最も重要な不確定要素である。

 それぞれの分類ごとに見てみよう(下の表参照)。

消費欲低下と安全志向が「二大不確実性」<br />消費財業界が縮小市場で生き残る道は?
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CO2削減の影響は案外小さい?
注視すべきは経済動向と安全志向

 一時マスコミでは、環境問題が大きく取り上げられていたが、今後の消費財業界では影響度は大きくないと考えている。

 CO2の排出量削減については、削減余地は依然としてある。しかし削減余地は、メーカーによる製造や物流分野よりも、生活者による製品使用の段階の方が大きい。しかも既に消費財メーカーによるCO2排出量の削減活動は進展中であるため、サプライチェーン全体において消費財メーカーが行うべきCO2削減活動は、相対的に重要度が低い。

 それに加えて、エコ関連商品の販売動向を見て見ても、生活者の環境問題に対する意識も当初の想定ほど高くならないとみられるため、消費財メーカーの環境対応が製品の売れ行きを左右する主要な要因になる可能性は低い。

 日本政府はCO2排出量の25%削減を掲げているが、前述の通り今後の排出量削減対象分野は生活者側が重要になってくる。したがって、環境問題が今後の経営戦略への重要な不確定要素にはなり得ないだろう。

 重要な不確定要素の1つは、もちろん「経済/規制」の分野での日本経済の低成長である。