ピケティ以来、「格差」という言葉が、一種のブームのようになっている。わが国は、アメリカや中国に比べれば、相対的に格差の小さい社会であると言われているが、格差の問題はどう考えればいいのだろうか。

「資産格差」はアメリカに
比べればはるかに小さい

 格差という言葉から、人々が反射的に連想するのは、おそらく資産の格差であろう。アメリカの資産格差については、よく、上位1%が全米資産の3分の1を、上位10%で7割を、上位20%で9割を保有、と言われているが、わが国ではどうだろうか。野村総研のレポート(2014年11月)によると、わが国では次の通り、上位2%で約2割弱を、上位20%で6割弱をという結果となり、しかも2000年から時系列で見てもさほどシェアは変わっていないのだ。

資産・雇用・教育の「三大格差」をどう減らすか

 もちろん、大きな資産格差があることは決して好ましいことではない。では、資産・所得の再分配を上手に行うためにはどうしたらいいのか。

 わが国の所得税は既に累進税率が導入されているので、これからの税制は消費税を基幹として考えるべきだろう。サッチャー元首相がいみじくも述べたように「われわれが汗水たらして働いた結果得られる所得に課税するのは、勤労を罰することになる。それよりも、個人が選択的に消費をする際に課税するほうがずっと公平」なのである。富裕層といえども消費をしなければ、およそ人生を楽しむことはできないのだから、サッチャー元首相の指摘は的を射ている。

 資産の再分配については、当欄で以前にも述べたように、相続税率を100%とする方向で検討を行ってはどうだろうか(もちろん、配偶者には相応の配慮があって然るべきであるが)。国家に吸い上げられるのがいやであれば、血縁の有無を問わず、生活費や教育費がかかる子育て世代である20代30代に対する贈与に限って贈与税率を0%とすればいい。そうすれば、例えば20代の若者が代表を務めるNPOやNGOにも高齢者の金融資産を移転することができるようになり、「金は天下の回りもの」が文字通り実現できるのではないか。