可能性はみんなにある あきらめないことが大切

 今、若い人たちに「夢を持っていますか」と質問をするとほとんど手が挙がりません。「人生が楽しいと思うか、学校は楽しいですか」と聞いても同様です。いろいろな質問をしても、「別に」とか「微妙」といった反応が多い。自分の立ち位置が見えなくなっている人たちが増えているように思います。私は、まず「あきらめない」ということを伝えたい。高校で先生が海外留学の話をしても、行ったこともないのに意味がないと否定的発言をする生徒が増えているそうです。いろいろなものを簡単にシャットアウトしてしまうのです。

 私は、大それた夢や大志を持てとは言いません。まず、「いろいろなものに興味を持とうよ、何気なく見過ごしてしまっているものに関心を持とう。そして自分の可能性を信じよう」という話をします。子どもたちは「頑張ってもどうせダメ」とか言ってきますが、「失敗しても明日がある、明日からまたやればいい。そういう気持ちを持とうよ」と言います。大人から「夢を持て、大志を抱け、将来像を描け」と言われると子どもたちは萎縮してしまいます。私は、「自分の可能性の引き出しを探す旅に出よう」と話しています。そうすると少しずつ心を開いてくれ、画一的といわれる今の子どもたちが発想の豊かさを見せてくれます。

 今、経済的に恵まれない環境にある子どもたちにも、あきらめないでほしい。昨年、ノーベル平和賞を受賞したパキスタンの少女マララさんが語った言葉が世界中に感動を呼びました。彼女は、「OneBook」と言い、「本が1冊あれば、私たちは学び続けることができる。本が1冊あれば、それを心の糧として学ぶための勇気を持ち続けられる」と言いました。厳しい環境に置かれているのは自分だけじゃない、世界中に同じような境遇の人がいてもっと過酷な状況にある子どもたちも存在する。本が1冊あれば、学びたいという気持ちと学ぶことの楽しみは消えないと少女が言っている。同世代の日本の子どもたちに、それはすごいことなのだと知ってほしいですね。

 国内にも目を向けてみましょう。私は先日、三陸にボランティアに行きました。東日本大震災から3年半以上が経過しても復興が進まず、校舎が元に戻らず、鉄道も復旧していません。そういう苦境にあっても子どもたちはあきらめることなく、この町を自分たちの手で復興していくのだという強い意思を持ち続け、そのために今何を勉強したらいいのか自ら考えています。

 三陸では、鉄道が復旧していないため、高校生たちは朝練や補習ができなくなっていました。が、一人の生徒が立ち上がり、早朝のバスを1本増便してもらい、朝練に参加できるようになり、補習も受けられるようになりました。与えられた環境の中であきらめてしまわず、立ち上がったことで大勢の仲間と学びやスポーツ、生きる楽しみを分かち合うことができたのです。皆さんもあきらめることなく、自分たちの可能性について考えていきましょう。

公益社団法人経済同友会 学校と経営者の交流活動
「活力ある21世紀の日本社会を支えて行く人材の育成・教育」のために、主に中学校や高校を対象に企業経営者の出張授業や講演活動(教員・保護者等)を原則として無償で行っています。

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PROFILE
出口恭子(でぐち・きょうこ)
東京大学法学部卒業後、ハーバード・ビジネス・スクールでMBA取得。ベイン・アンド・カンパニー、ディズニー・ストア・ジャパンを経て、日本GEプラスチックスに転職し、同社取締役最高財務責任者(CFO)となる。その後、ヤンセンファーマのMR、日本ストライカー代表取締役社長、アッヴィ合同会社社長を歴任。同時に、経済同友会「学校と経営者の交流活動推進委員会」副委員長、「経済連携委員会」副委員長も兼務。

 

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