年明けなので、主要新聞6紙の元旦の社説を読み比べしてみる。たまには人の意見を拝聴するのも、いい。話は少し散漫になるかもしれないが、読売、朝日、日経、毎日、産経、東京の順で見てみよう。
「急変する世界 危機に欠かせぬ機動的対応、政治の態勢立て直しを」と題した読売の社説は、最初の小見出しを「新自由主義の崩落」と掲げた。「新自由主義・市場原理主義の象徴だった米国型金融ビジネスモデルの崩落が、世界を揺るがせている」「急激な信用収縮は、実体経済にも打撃を与え、世界は同時不況の様相を深めつつある」というが、ここでいう新自由主義と市場原理主義が具体的に何を指すのかが定かでない。
アメリカのビジネスモデル、アメリカの経済システムのすべてがおかしかったわけではあるまい。金融の過大なレバレッジや、複雑すぎる金融商品を無制限に認めたこと、信用拡大の質の面に対する監督が疎かになったことなどが今回の問題の直接の政策的原因だ。
特に金融システムは、銀行を潰せないことから見ても、ある種の公共財だが、公共財としての銀行に対する規制と監督の在り方に難点があった。読売だけではないが、新自由主義やグローバリズムといったレッテルを貼って、アメリカのやり方が全て駄目だったと書くのは、率直に言って、雑な議論ではないか。
読売社説は景気の底割れを防ぐため、内需拡大を急ぐ必要があるが、従来通りの公共事業という処方箋では限界があると言う。これはいい。では、どうせよというのか。
日本の強みは、減少したとはいえ、まだ1467兆円の個人金融資産を抱えていることで、150兆円から170兆円が平均的な個人のライフサイクルから見て余剰貯蓄であるとする総合研究開発機構(NIRA)の試算や、タンス預金だけでも30兆円、当座・普通預貯金としてほぼ眠っている資金が120兆円あるとする日銀のデータを引き合いに出し、これら“眠れる資金”を掘り起こして活用することが重要な政策課題だという。
しかし、具体的に何をどう引き出すのか示されていない。これでは、あたかも眠っている金を召し上げて使うようなイメージだ。資産に課税するのか、あるいは強制的に寄付でもさせるのか、不明瞭で気味が悪い。
社説の後半部分では、日米同盟の維持、アメリカとの関係強化の重要性に言及しているが、昨年の大連立未遂の仕掛け人だった読売らしいのは、衆参のねじれ国会をなんとかしたいと強調する点だ。次の総選挙では、自民、民主ともに単独過半数は難しいという情勢分析を示すが、与野党ともに連立の動きがあることを指摘し、中長期的展望を踏まえた政策を「迅速かつ強力」に推進できる政治態勢が必要であると主張する。
相変わらずの大連立指向だが、大連立政権が「拙速かつ強引」にならない保証はない。一つの意見だろうが、筆者はあまり共感しない。