相関と因果の違いを理解しているか?

――売上予測のベースとなるのが評価項目の選別であり、そのデータの精度が重要なのですね。ということは、新規出店で失敗するのは、間違ったデータをベースに売上予測を算出しているからといえませんか。

楠本貴弘
ディー・アイ・コンサルタンツ
マネジャー

 それを認識することが、ファクトベースの出店戦略を構築するための第一歩です。店舗戦略のベースは売上予測であり、その精度を高めたいのであれば「正しいデータ」が必要です。間違ったデータをいくら取っても間違った結果しか導き出ません。

 正しいデータとは、既存店の店舗内で実際に起きている出来事を証明できるデータです。現場で起きていることが事実ですので、結果が間違っている場合はデータの取り方や見方が間違っていると考えるべきです。

 新規出店にあたって周辺人口などの統計データを使う場合、そうしたデータの取り方に問題がある企業も少なくありません。例えば「通行量×入店率」で売上予測を立てている企業がありますが、天候や曜日、時間帯による変動幅が大きい通行量を正確に計測するのはほぼ不可能です。こうしたケースで正しいデータを得るには、業種や業態に合ったボリュームゾーンを複数回、計測する必要があります。

 売上データの見方についても間違いが多いようです。売上データを詳細に分析すると、「客数×客単価」以外のさまざまなファクトが見えてきます。それを見逃すと、例えばファストフードの場合、ファミリーが土日に利用する頻度が高いのにカウンター席ばかりとか、平日にカップルがカフェとして利用する機会が多いのに4人掛けテーブルばかりというように、その商圏に不適切な店づくりをしてしまいます。

 データにまつわるこうした「思い違い」を挙げればきりがありません。中でもやっかいなのが、データを都合よく使うケースでしょう。

 その気になれば、データは自分の都合に合わせた解釈ができます。その典型が「相関」と「因果」のすり替えです。売上関連のデータのサンプル数や採り方を工夫すれば、「このデータによって、この現象を説明できる」というような相関はいくらでも作り出すことができます。データを示す側の思い通りの結論が意図的に仕組まれていても、統計に詳しくない人にとっては説得力があるものです。

 しかし、偶然による相関はたくさん存在しますし、サンプル数が大きくなるにつれて相関を示せなくなる可能性があることを忘れてはなりません。

相関と因果を混同して、安易にデータを信じると、えてして判断を誤ります。例えば、「競合店が多いエリアほど店の売上が高い」というデータがあるとします。しかしながら、実際は「競合店が多いから売り上げが高いのではなく、市場規模(ポテンシャル)が大きいので”結果として”競合が多くなり、売上も高い」のです。この現象は相関を示しているのであり、安易に因果関係に結び付けることはできません。

 現象を示すデータは丹念に分析しなければ、なかなか実態が浮かび上がりません。商圏のポテンシャルが大きいエリアには、さまざまな企業が出店します。その結果、売れている店の近くに競合店が増えます。つまりこの場合、「競合の多寡と売上の高低」の相関より、「競合の多寡と商圏ポテンシャルの大小」の相関が高いのです。したがって、商圏ポテンシャルの大きい場所は売上が高い傾向にあり、同時に競合も多いという結論が導き出されます。

 相関はあくまで目安であり、因果関係はそう容易に突き止めることはできません。両者を区別した上で、目の前の現象が何に起因するかを探らなければ、店舗のありのままの姿をデータ化することはできません。

 データを収集することが、いつの間にか「データを活用している」に置き換えられているケースも多々あります。データは、そのままでは数字の羅列にすぎません。正しい分析のプロセスを踏んで初めて、データの意味と価値が発揮されます。重要なのは、データにどういう意味づけを与えるかなのです。

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