課長になりたい男性は6割
女性ではわずか1割という現実

 ケースの亜紀さんのように、十分な能力があってもリーダーになりたがらない女性は実に多いのが現状です。管理職ではない女性に昇進希望を尋ねた調査(※1)では、女性の68.9%が「役付きでなくてよい」と答えています。昇進希望があっても「係長・主任まで」と答えた人が19.7%。課長以上を希望した人はたったの10.8%です。同じ調査で、男性では60.4%が課長以上を希望、「役員以上」と答えた人も16.0%もいます(女性は1.0%)。

 課長を一つの目安とすると昇進希望が6割と1割、この男女差はどうして生まれるのでしょうか?

 女性が「課長以上への昇進を望まない理由」を、同じ調査から見てみましょう。一番多かった回答は「仕事と家庭の両立が困難になる」。40.0%の人がこの選択肢を選んでいます(複数回答)。続けて「責任が重くなる」30.4%、「自分には能力がない」26.0%、「周りに同性の管理職がいない」24.0%となっています。

 両立の困難さだけでなく、責任が重くなることや能力がないことを理由に女性が昇進を望まないことを、「責任から逃げている」と解釈する人もいます。ですが、女性がリーダーになりたがらないのは、決して「逃げている」からではないのです。

 女性が昇進を望まないことの背景には、まず、「両立が困難」と言われる通り、日本企業の多くで管理職の長時間労働が常態化し、家庭では共働きであっても家事育児の負担が妻に大きく偏るという現実があります。また、多くの日本企業で、女性はコース別管理により昇進可能性がない状態に置かれてきたり、職種の区分に男女差がなくても、配属のされ方や能力開発機会の与えられ方に差異があったりすることで、女性は十分に管理職候補として育成されてこなかったことも挙げられます。こうした「育てられ方の違い」も、女性が管理職になるというキャリアを考えない大きな要因です。こうした構造的な要因については、稿を改めて詳しく触れたいと思います。

(※1)労働政策研究・研修機構「男女正社員のキャリアと両立支援に関する調査」2013年

「気配りができる」「協力的」
そんな女性ほどリーダーを嫌がるワケ

 女性がリーダーになりたがらない理由は、それだけではありません。

「自分には能力がない」、「責任が重くなる」、「周りに同性の管理職がいない」。こうした声の背後にあるのは、リーダーになった自分をイメージできない、責任と引き換えに手にするはずの高い評価が思い描けない、という女性の気持ちです。

 ケースの亜紀さんは、上司とメンバーの板挟みで困ってしまっています。亜紀さんはそれまで、「何でもニコニコ引き受けて」、「丁寧なのに素早くて」、「部門の方針をよく理解して」従うことで評価されてきたのです。感じのよさ、丁寧さ、従順さといった点は、彼女の女性らしさと結びつけて評価されていました。

 ところが、サブリーダーに任命された途端、彼女は正反対の「意思決定する」、「毅然と指示する」という資質を求められるようになったのです。これまでと反対の能力を発揮するのが難しいだけではありません。どんどん方針を決めて主張するようになったら、彼女はどのような女性だと見られることになるでしょうか?メンバーから飲み会に誘われる「素敵な先輩」でいられるのでしょうか?営業や上司は、新たな彼女を評価してくれるでしょうか?