「人手不足があまりに深刻、現場はまるで戦場のようです」――

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 中部地方のある老人保健施設。現場からは毎日毎晩、「手が足りない!」の悲鳴が上がる。ドスンとベッドから人が落ちる音、バーンと車いすがひっくり返る音、何かに抵抗する叫び声……。施設のあちこちで四六時中、何かが起きているからだ。

 この老人保健施設は入所する100人の利用者に対し、最大で12人の介護士がつく。だが、それでも利用者たちをケアするには手が足りない。

 これが夜勤となれば、100人に対して介護士は4人に減る。その4人が広いワンフロアを縦横に駆けずり回る。「利用者が急病になり救急車で搬送することもあるが、付き添うことができない。夜中に亡くなった方がいてもかかりきりになれない。ほかの大勢の利用者たちは待ってはくれないんです」と関係者は明かす。

 募集広告を掲げても、ここ数年、介護士の応募は途絶えている。今年の4月から勤務待遇の改善が実施され、少しばかり給料はよくなった。だが、仕事がきつい、体調を崩しても休暇が取れない、託児所がなく子どもを預けられない、などを理由に敬遠されてしまう。この施設では介護の現場を支えるために、ついに事務職員ですら駆り出されるようになった。

 前出の関係者は「今後、団塊の世代が高齢化すればもっとひどいことになる」と危機感を高める。

外国人技能実習生の
7割を占める中国人に期待

 少子高齢化が急速に進む日本では、171万人の介護人材(平成25年度時点)を2025年までに最大で250万人規模に拡大する必要があると言われている。だが、今の日本の惨状からすれば、250万人を確保するには、外国人の介護人材に依存せざるを得ない。

 その取り組みはすでに始まっており、来年度から「技能実習」を名目に、海外からの介護人材が日本にやってくる。こうした人材が長期的に日本に在留し、いかに力を発揮してくれるか、今後はその環境整備が課題となる。

 厚生労働省は、「技能実習はあくまで日本から相手国への技能移転」との建前を強調、「ここで介護技術を習得させ、それを母国に持ち帰ってもらうことが前提だ」としながらも、その一方で、従来の技能実習制度に介護職種を追加する形で、外国人留学生が介護福祉資格を取得した場合の在留資格の付与について検討を進めている。