録画した地デジ(地上波デジタル)の番組の複製(ダビング)回数を1回から10回に拡大する「ダビング10」が7月5日をめどに実施される見通しとなった。総務省が19日夜に開催した情報通信審議会の「デジタル・コンテンツの流通の促進等に関する検討委員会(デジ検)」で関係者の合意が形成できたためである。だが、土壇場で関係者がそれぞれの利害に固執し、1ヵ月以上も実施が遅れたことは実に多くの教訓を残した形となっている。
一連の騒ぎによって被害を蒙ったのは消費者だ。導入を楽しみにして、高価な機器を購入したにもかかわらず、その期待が裏切られた。
ここ数日、経済産業省と文化庁が打開案を示したものの、関係者たちはこれまでに蓄積した不満をまとめて解消しようと欲張っており、この打開案が不発に終わる寸前だった。北京オリンピックという地デジ普及の好機を逸してしまうのも明らかだった。
関係者には薄氷の合意ができたことで満足せず、なぜ、総務省の音頭で昨年8月にまとまったデジ検の報告書をきちんと履行できなかったのか。あの報告書こそ、それまで不可能と思われていたダビング10が実現へ向けて動き出した転換点なのだから、すべての関係者がなぜ、あの報告書で容認・公約した役割を果たせなかったのか猛省してもらいたい。
著作権団体の拒絶で
暗礁に乗り上げたダビ10
「戸惑いと失望を感じざるを得ない」――。
デジタル私的録画問題に関する権利者会議28団体と社団法人日本芸能実演家団体協議会加盟61団体は6月17日、ダビング10の早期実施に向けて渡海文部科学大臣と甘利経済産業大臣が公表した当面の打開策を拒絶するコメントを公表した。
実は、このコメントの公表こそ、それまで乱暴さが目立っていた家電メーカーや経済産業省に代わって、今度は著作権の権利者たちの姿勢に会議の目が向いた瞬間と言ってよいだろう。
そもそもダビ10は、録画機に内蔵したハードディスクからDVDやブルーレイに合計10回の複製を可能とするものだ。従来の「コピーワンス」は、複製が1回しかできなかったうえ、複製に失敗しても元データが消去されるものだった。このため、ダビング10によって、地デジの魅力は飛躍的に高まるとされていた。対象は、メーカーによって多少違うが、早いところで2006年半ばから発売された機器となっている。