素数と物理学の不思議なつながり。
「リーマン予想」

 この連載の中でも紹介した「リーマン予想」第16講:日常への他人の視点 ~Π型人間・Π型チームのつくり方 参照)でも、同じようなことが起きています。

 以下にその部分を(一部改変して)引用しましょう。

 リーマン予想とはもともと、単なる素数(*2)の現れ方への疑問でした。しかし、だんだんとその深遠さが理解され、今や「究極の問題」とされています。

リーマン予想は、素数(数学)とこの宇宙(物理学)とを、直接的に結びつけるものだったのです。

 最初のこのつながりを直感で見抜き、その数学的能力で示した(*3)のは、大数学者レオンハルト・オイラー(Leonhard Euler、1707~83)でした。「素数と円周率πはつながっている!」(1735年)

 そして1972年、プリンストン大学恒例のお茶会での、数学者と物理学者の雑談から次の飛躍が生まれます。

 数学者のヒュー・モンゴメリー(ミシガン大学教授)は、たまたま隣にいた物理学者フリーマン・ダイソン(プリンストン高等研究所)に、自分の専門である「リーマン予想」の話をし、ある式を紙に書いて見せます。専門外の話をなんとなしに聞いていたフリーマンは、その式を見てびっくり。ミクロな世界を扱う物理学のある式と、まるで同じだったからです。素数の中に、この宇宙構造の秘密が隠されていた、と言ってもいいでしょう。

 もっと幅広い専門性を組み合わせるために、1996年、200人の数学者・物理学者等を集めた第1回リーマン会議が開かれました。そこでも大きな飛躍がありました。

「非可換幾何学(ひかかんきかがく)」という最新の数学概念を築きつつあったアラン・コンヌ(Alain Connes, 1947~)は、その会議の場で気がつきます。自分の数学の専門性が、素数と深くつながっていること、そしてミクロな物理現象とも関係することを。

 今現在、リーマン予想および宇宙論への総攻撃が、「非可換幾何学」という武器を得た数学者・物理学者らによって行われています。

 素数という不思議な存在のなかに、宇宙の原理が埋まっていそうです。内(素数)を見ることで、外が理解できるのです。そしてそれを攻略するための鍵は、物理学や新しい数学から、もたらされてもいるのです。

*2  1以外で自分自身以外に割り切れる数(約数)を持たない自然数のこと。その現れ方の「不規則性」は、現代の通信暗号の基礎ともなっている。2600年前の古代ギリシャのユークリッドは、素数が無限にあることを証明したが、その規則性は証明できなかった。
*3  無限にある素数をある方法で掛け算・割り算していくと、6分のπ二乗、になる。