グローバル競争が激化し、経営の浮き沈みの振れ幅が大きく、変化のスピードも速くなっている今、正しい現状認識に基づき、「やるべきときに、やるべきことを、きちんとやること」ができないと、企業は容易に破綻への道を歩みはじめます。そこで求められるのが、強いリーダーシップなのです。リーダーが自社を取り巻く現状を正しく判断したうえで適切な意思決定を行い、やるべきことを確実に実行する。それこそが企業が生き残るための大前提となります。

――ここ数年、日本でも「プロ経営者」と呼ばれる人たちが業績不振企業やグローバル企業の経営者に抜擢されるケースが増えています。野田さんの言う「リーダー」とは、彼ら「プロ経営者」たちを指すのですか?

日本でも「プロ経営者」の存在が注目されるようになり、彼らはさまざまな企業で成果を挙げています。ただ、私が数多くの企業に関わってきた経験から言えるのは、企業の成長や変革に必要なのは、トップマネジメントのもう一段下の中堅層、いうなれば「現場のリーダー」です。優れたトップマネジメントだけではなく、トップの方針を現場レベルで具現化する実行役としてのリーダーがどれだけいるかが、その会社の実力につながります。

そして、有事に対応できる現場のリーダーが圧倒的に不足していることこそが、日本企業が抱える大きな課題でもあるのです。

――なぜ日本では現場のリーダーが育っていないのですか?

ひとつには、日本企業における減点主義があります。減点主義の評価制度では、「失敗しない人」が昇進の階段を上っていきます。それゆえ、社員たちは「いかに失敗せず、与えられた仕事を的確にこなすか」に注力して、あえてリスクをとって困難な課題にチャレンジしようとはしません。仕事において「失敗しないこと」はたしかに重要ですが、それは「平時」にかぎります。

先ほども話したように、企業を取り巻く環境はグローバル化が進み、変化のスピードも速くなっています。昨日まで好調だった事業部門が、いきなり業績不振に陥ることも当たり前のように起きます。さらなる成長を求めて、海外企業を買収してグローバル市場に参入する機会も今後ますます増えていくでしょう。しかし、クロスボーダーの買収は、管理体制やコミュニケーションの確立が難しく、統合後に現場でさまざまな問題が発生しがちです。そうした困難な状況に直面したとき、平時の考え方や動き方では対応できません。むしろコスト削減や事業撤退、人員削減など、あえてリスクをとってでも抜本的な改革を起こそうとする「有事のリーダーシップ」が求められます。

日本の企業はこれまで、そうした有事のリーダーシップを育成する機会を社員に十分に与えてきませんでした。それゆえ、厳しい状況を打開できる現場のリーダーが不足しているのです。