――野田さんがこれまで企業再生の現場で出会ってきた優れたリーダーに、共通する特徴はありますか?

優れたリーダーの方々は、みなさん強烈な「危機意識」を持っています。その危機意識はさまざまなかたちで現れます。

有事に対応できる現場のリーダーが<br />日本企業に不足している

たとえば、会社が黒字経営をしていれば、普通の社員は「このままで大丈夫だ」と安心します。しかし、危機意識のあるリーダーは「今の収益構造はどこに依存しているのだろう?」と疑問を持ち、現状を分析します。すると、その会社の経営はひとつの事業部門に依存していて、ほかはすべて真っ赤であることが発覚したりします。生半可に黒字になっている企業ほど、本質的な問題が見えにくくなっているので、社員の中に危機意識が生まれにくく、ある日突然業績が悪化して手に負えなくなるケースが多いのです。

そこでリーダーは、「この主要事業が倒れたら、会社はまずいことになるのではないか」「事業ポートフォリオを見直す必要があるのではないか」とシミュレーションをして、次の手を考える必要に迫られるのです。

また、「競争に対する意識」もリーダーにとって不可欠な資質です。自社が生き残るために競争しなければならない相手は、今や国内だけではなく、グローバルな市場にあふれています。リーダーは常に自分の会社の外に目を向けて、市場や競合の動向などにアンテナを張り巡らせて情報を収集し、事業を推進するための判断と行動を行わなければなりません。

――平時であっても、有事の種はあらゆるところに潜んでいる、と。

そう思います。それゆえ、コアビジネスはコアビジネスとして成長させ続ける一方で、表面上見えていることだけではなく、「内実はどうなっているのか?」「将来的にどうなりそうか?」「競争相手と比べてどうなのか?」などのことをいつも考え、有事の芽をいち早く摘んでいく必要があります。その意味では、明らかな危機的状況ではない平時でも、有事のリーダーシップは求められます。平時と有事が絡み合っている複雑な状況の中で、いかに本質的な問題を察知して対策を講じ、事業の目的を達成するかが、現代のリーダーに課せられているミッションなのです。

(インタビュー後編は6月9日火曜日に公開致します)