昨年の「第57回全国味噌鑑評会」で「あるちざん」が大臣賞に次ぐ「食料産業局長賞」を受賞した。3年間、原発事故の影響による風評被害に苦しめられるなか、これまで出品したなかでは最高の結果だった。

「じつは鑑評会には当初、否定的だったんです。比較するなんて、と。でも『お前のところはたまたま美味しくできただけだ』と同業者の方に言われましてそのとおりだな、と。もちろん鑑評会で認められるのが本当に難しいのはわかっていました。結局、この9年で7回受賞させていただいたんですが、自分たちの技術だけでなく一緒につくっている生産者の方々も評価されたわけで、それは素直に嬉しいことです」

 味噌造りは麹菌、乳酸菌、酵母などの微生物によって大豆を分解、発酵させてつくる。材料、技術、時間。そのすべてが揃わなければいい味噌はできない。

JOZO CAFEの店内にはこだわりの食材も並ぶ。レトルトのイシガキカレー(当然、無添加)は一食の価値がある

 ところでJOZO CAFEには「土地を感じ、季節を味わい、器を楽しむ」というコンセプトがあり、おいしい食べ物はもちろんのこと工芸品をはじめとした職人の手がける作品に触れることができる。味噌作りもそうだが『(ものをつくる)人々の想いを伝える』という五月女さんの仕事の本質は、ライター時代から少しも変わっていない。

いい味噌を食して感じられる
生命の有機的なつながり

 よく『冴え』という表現をするが、いい味噌は表面に照りがあり、色艶がいい。長期熟成された味噌は素材である米や大豆が分解されているため溶けやすい。

 いい味噌でつくった味噌汁は滋味があり、もちろん体にもいい。食べ物によって我々の身体はつくられているのだとわかる。

器にも関心を持つ五月女さんが行き着いた味噌汁に一番あう器。故・角偉三郎さんがつくった「座椀」。現在は息子さんが後を継がれている

 別の見方もできる。数年前にベストセラーになった福岡伸一氏の一連の著作によって、動的平衡という言葉が広まった。外部から食べ物を取り込むことで、新しい分子が身体に取り込まれる。すると、元々身体にあった古い分子はところてんのように押し出され、平衡状態が保たれるという考え方である。その流れが止まった瞬間、死が訪れる。つまり生命は少しも自律したものではなくて、外部との関係性によってようやく保たれているに過ぎない、という話だったと記憶している。

 そんな謙虚な生命観に基づくと、食べることは身体の内側だけの問題ではないのだとわかる。味噌について考えることは、生産者のつながりについて思いをめぐらすことである。また、微生物の働きは環境とも無関係ではない……。挙げていけば切りがないが、すべてが有機的につながっている。食べ物を選ぶことは自分のためだけではないのだ。