中ロ両方は敵に回せない!
突如ロシアとの和解に動き出した米国

 前回の記事で筆者は、米国が中国にリベンジするにあたって、「ロシアと和解する可能性がある」と書いた。米国はこれまで、「敵に勝つために、他の敵と組む」ことを繰り返してきたからだ。

 たとえば、米国は第2次大戦時、日本とナチスドイツに勝つために、「米帝打倒」を国是とするソ連と組んだ。戦後は、敵だった日本とドイツ(西ドイツ)と組み、ソ連と対峙した。1970年代にソ連の力が増してくると、米国は中国との和解に動いた。

 こういう過去の行動を見れば、米国がロシアと組む可能性は否定できない。誰がどう考えても、中国・ロシアを同時に敵に回すより、ロシアを味方につけて(少なくとも中立化させて)中国と戦うほうがいい。では、「AIIB」後、米ロ関係にどんな変化が生じているのだろうか?

 米国のケリー国務長官は5月12日、ロシアを「電撃」訪問した。

<露訪問の米国務長官、ウクライナ停戦履行なら「制裁解除あり得る」AFP=時事 5月13日(水)7時13分配信
【AFP=時事】米国のジョン・ケリー(John Kerry)国務長官は12日、ロシアを訪問し、ウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領とセルゲイ・ラブロフ(Sergei Lavrov)外相とそれぞれ4時間、合わせて8時間に及ぶ会談を行った。
 その後ケリー氏は、ウクライナの不安定な停戦合意が完全に履行されるならばその時点で、欧米がロシアに科している制裁を解除することもあり得るという見解を示した。>

 引用部分は短いが、非常に重要な内容を含んでいる。まず、ケリー(そして、ケリー級の政府高官)のロシア訪問は、「クリミア併合後」はじめてだった。つまり、「ケリーが来た」こと自体が、ロシアにとっては「大事件」だった。

 そして彼は、プーチンと4時間、ラブロフ外相と4時間、計8時間も会談している(テーマは、シリア、イラン、ウクライナ問題だったと発表されている)。

 個人でも会社でもそうだが、仲良くしたくない相手とは、長く話さないものだ。「長話」はつまり、米国側もロシア側も「仲直りしたい」という意思があるということだろう。そして、ケリーは決定的なことをいった。

<ケリー氏は、ウクライナの不安定な停戦合意が完全に履行されるならばその時点で、欧米がロシアに科している制裁を解除することもあり得るという見解を示した。>

 「制裁解除もあり得る!」これも、「AIIB事件」前には、想像できなかった事態である。ここには書かれていないが、ケリーはこの訪問中、「クリミア問題」を一度も口にしなかったという。つまり「クリミアのロシア領有権を認めることはできないが、『黙認』で『手打ち』にしたい」ということではないだろうか?

 このように米国は、ロシアとの和解に動いている。理由は、中国との戦いに集中するためだろう(ちなみに、米国は、中東最大の仮想敵イランとの和解にも動き、イスラエルから激しく非難されている)。