剣道の判定は素人目には解らない部分が少なくなく、打突が入ったように見えても、一本と見なされないことがよくある。ひとつには選手の動作や竹刀の振りがあまりにも速くて正確に入ったかどうかが見えないこと。また、一本と見なすかどうかには竹刀の入り方や直後の姿勢、打たれた側の体勢など独特の基準があるからでもある。

 審判には剣道の熟達者が判定の研修を積んだうえでなる。その過程で培った目や感覚によって、その打突がどこまでが無効で、どこからが1本という明確な基準がある。それに照らし合わせて、韓国選手の面は一本にならないと判断したのだろう。

 また、もしそれが日本びいきの判定だとしたら、韓国選手が勝った次鋒戦はどうして旗が上がったかということになる。この試合で韓国選手は面を二本取ったが、面を打った直後、3人の審判はほぼ同時に白旗を上げた。それが副将戦の打突では、3人の旗はピクリとも動かなかった。この明確な差。審判の目から見て、この時の面は一本の基準を満たしていなかったことは明らかだ(副将戦では、日本選手の籠手が入ったように見えたシーンもあったが、これも一本にはならなかった)。

 韓国メディアからすれば、次鋒戦は試合の序盤だから公正な判定をした、副将・大将戦は勝負がかかっているから日本寄りの判定になったなどと言い出しかねないが、武道館を埋めた剣道ファンや世界52ヵ国から集まった選手や指導者が見守る決勝戦を任された審判が、そんな見え見えの日本寄りの判定などできるだろうか。

 韓国メディアは触れていないが、他にも審判の公平さを示す判定があった。副将戦でのことだ。この試合はつばぜり合いが長く続いた。剣道のルールでは「故意に時間を空費する」、「不当なつばぜり合いをする」といった行為を反則と見なすが(2回反則を犯すと一本になる)、どちらに非があるか、これも素人目には解りにくいものだ。この時、反則を示す旗は安藤に出た。大将戦では韓国選手が「場外に出た」ことで反則が取られたが、これも当然の判定。いずれも反則が2にはならず勝敗を左右することにはならなかったが、公正さを感じさせる判定だった。

合理的なスポーツのルールとは一線を画す
「武道としての剣道」の判定の難しさ

 各国の代表が国の名誉を背負って戦う国際大会では判定を巡るトラブルがしばしば起きる。サッカーW杯でも疑惑の判定と呼ばれる事件は何度かあったし、ハンドボールでは中東の国をあからさまに勝たせようとする「中東の笛」が吹かれる。世界剣道選手権も日本以外の国の審判のレベルの低さが以前から指摘されており、判定への不満がささやかれることもあったが、決勝戦の審判3人は正当な判定をしたと思う。