「最悪の時」こそ
「いいこと」を生み出す源

南場 ちょっとコンサル時代の話に戻るけれど、いまのユーザーファーストな考えがあるのも、コンサルの経験があるからなんですよ。
森川 というと?
南場 私はチームプレイが苦手なんですよね。バスケットボールをやっても人にパスしないし、全部自分でゴール下まで行っちゃうタイプ。
森川 絵に描いたようなフォワードタイプですね(笑)。
南場 マッキンゼーに入っても、そういうメンタリティのままでね。コンサルってみんな横並びでスタートして、人を厳しく評価する組織でしょ? 「私はどれだけできているんだろう」って気になりすぎちゃって、空回りして、成果もまったく出なくて。ビジネススクールから戻った最初のプロジェクトでつまずき、もうやめようと思ったんですよ。
森川 ええ。
南場 それで、これが最後だと思ってあるプロジェクトに参加したんだけど、そういう状況だから「自分がどれだけ成果を挙げるか」なんて考えないじゃない。ただお世話になったパートナーに恩返しをしようと思って最後のプロジェクトを引き受けました。そしたら、人に助けてもらうことがいとも簡単にできて。わからないことを聞くとか、知ったかぶりしないとか、「成果を出すために教えてください」って姿勢を自然にとれたんだよね。そのとき、はじめて仕事がうまく回って、クライアントが喜ぶ顔を見ることができたわけ。
森川 いいですね、お客様の喜ぶ顔。まさに「ユーザーからの評価」の瞬間だ。
南場 それをDeNAでは「Delight(デライト)」と呼んでいるんだけどね。きっと、私にとってあのときが自分からユーザーに意識が向いた瞬間で。そこで大きな学びを得たのかなと思います。
森川 それもまた、最悪な状態を最大の「いいこと」に結びつけたと言えるかもしれませんね。
<続く>