イラスト/びごーじょうじ
中国料理は四川、広東、北京といった地方ごとに味付けや調理法が異なるのが特徴。今でも湘南料理(湘南は四川の少し南にある地方)の店を訪れると毛沢東好みの味に出合える。例えば毛家紅焼肉(毛沢東風の豚の角煮)を食せば、田舎風の味付けが好みだったという毛沢東の逸話がよく理解できる。
人気があった深夜ドラマ『孤独のグルメ』の第4シーズンで、青山シャンウェイの『毛沢東スペアリブ』が紹介されたのも記憶に新しい。これは骨付きのスペアリブをカリッと揚げ、にんにく、唐辛子、干しエビ、クミンなどの香辛料で炒めたものだ。辛味の効いた刺激的な味は活力が出るだけではなく、やみつきになる。こうした唐辛子炒めも湘南料理の名物だ。
湘南料理は「毛家菜」(毛沢東の家の料理)とも言われる。中国の歴史のなかで抜群の存在感を持つ毛沢東は中華人民共和国の建国の父。長い歴史の中で統一国家の意識がなかった中国大陸を共産主義によってまとめた指導者だ。
湖南省で生まれ、教師をしていた毛沢東は中国共産党に参加、やがて戦略家として才を示し、頭角を現す。日中戦争では米国や旧ソ連の援助を受け、蒋介石率いる国民党軍と共に日本軍と対峙するが、その裏で日本軍とも取引し、国民党軍を消耗させた。
第2次世界大戦が終わると蒋介石と会談を持ったが、交渉は決裂。国共内戦(蒋介石率いる国民党軍と毛沢東による共産軍の内戦)が起きる。最初こそ、国民党軍が優勢だったものの、毛沢東が展開したゲリラ戦によって徐々に形勢が変わり始める。ついに1949年、毛沢東は中華人民共和国を建国し、蒋介石を台湾に追いやる。