フォレストライン社長 遠藤大輔
フォレストライン社長 遠藤大輔(撮影:宇佐見利明)

 「メディア規制が厳しい中国で、メディアを持つことができたら、商機をつかめるはずだ」。遠藤大輔はそう思い、中国でフォレストラインを設立、オンライン市場に参入した。2003年のことである。

 オンラインマガジンは、インターネット上で閲覧される雑誌。フォレストラインでは、「フラッシュ」というウェブコンテンツ作成ソフトで制作し、動画が見られたり、音声が聞けたりなど、オンラインマガジンならではの誌面を企画・制作する。回線速度が遅い中国でも雑誌をスムーズに閲読できるよう、ダウンロード形式を採っている。

 設立後わずか4年で、100万ダウンロード以上のオンラインマガジン市場で、シェア50%を占めるまでに成長。8月1~15日のダウンロード数トップ10では、ブログ女王・徐静雷(女優)を起用して人気を博す「カイラ」(1位)をはじめ、なんと9誌を手がけている。

 これだけのシェアが獲得できた秘訣は、制作プロセスを変革したことにある。“クリエイティブのライン化”を図ったのだ。

 通常、雑誌制作といったクリエイティブな作業は、企画、デザイン、写真加工、配信など、全工程が1人のクリエーターに一任される。それを遠藤は、スキルごとに分業化した。

 一気通貫のプロを育成するのは難しいが、個々の工程のスペシャリスト養成は比較的容易。同じ作業を毎日繰り返させることで、短時間で熟練並みのスキルを習得させた。その結果、大量の人材確保と、作業時間の短縮が可能となった。

 また、スキルの高低で給料の設定を変えられるため、作業に見合ったぶんだけ人件費を払えばよい。そのため、日本での制作費の4分の1という、低コスト制作が可能になった。