ここ1週間、日本の駅事情などを調査するために来日した中国視察団のアテンドに追われていた。視察団のメンバーは訪日が初めてなので、目にしたり、体験したいろいろなことに驚いている。

 Suicaもメンバーたちを感心させた「日本」の一つだった。駅ナカの店での買い物はもちろん、コンビニエンスストアでも、自動販売機でも使えるのを見て、感嘆していた。

 Suicaのようなカードは中国語では「交通カード」と呼ばれるが、交通関連の利用を考えて開発したこのプリペイドカードで駅ナカや駅周辺で靴や帽子、傘などを買えたりする体験をしたメンバーたちは新鮮なカルチャーショックを覚え、興奮していた。

 メンバーたちのこうした反応を目の当たりにした私はむしろ感慨深いものがこみ上げてきた。実は、この交通カードにおいては、かつて中国の方がリードした時期があったのだ。だが、いまや用途の広さにおいても便利さにおいても、日本に完全に追い抜かれた。

 私が書いたものの中でも、その日中の交通カードが追い抜いたり追い抜かれたりしてきた軌跡がはっきりと残っている。それをここに再現したい。

上海の「交通カード」は
Suicaのはるか先を行っていた

 2003年10月18日付朝日新聞に、私が「交通カードで先を行く」と題したものを書き、中国の交通カードの先行ぶりを紹介した。

 当時、関東の私鉄、地下鉄、バスの計43社が、06年春にも、JR東日本のカード「Suica(スイカ)」と相互利用できるようにする、と報じられたばかりだった。「カードの制度がばらばらなことの不便さが指摘されて久しい中、ようやく、という印象だ。この点で、上海はずっと先を行っている」と私は書いている。